#1132
巻頭特集

記事を
ブックマークする

「憲剛、ボールが止まってないぞ」川崎F、名古屋で“個”を伸ばした風間八宏が語る「止める・蹴る」の真髄と“魅せて勝つ”次世代につながる方法論とは

2025/11/22
5年間率いた川崎フロンターレでは黄金期の礎を築き、名古屋グランパスでは初年度からJ1昇格を成し遂げた。現在はJFL昇格を目指す南葛SCで指揮を執る理論派。その最新の技術論を求めて、晩秋の練習場を訪ねた。(原題:[止める・蹴るの真髄]風間八宏「次世代につながる方法論を」)

 風間八宏は日本サッカーの技術を変えた名将である。

「止める・蹴る・外す」といった風間語録で技術を定義し、あらゆるスキルを言語化。トラップの正確さや逆を取る動きなどを追求し、川崎フロンターレを2012年から5シーズン率いて黄金期の礎を築いた。

 最大の特徴は個人が伸びることだ。筑波大学時代に谷口彰悟、川崎時代に谷口、板倉滉、三笘薫、田中碧(当時三笘と田中は川崎U-18所属)、名古屋時代に伊藤洋輝、菅原由勢を指導。彼らは技術を武器にヨーロッパへ羽ばたき、現在日本代表の核になっている。今年11月にはセレッソ大阪アカデミーの技術委員長時代に指導した北野颯太が日本代表に初招集された。大久保嘉人やジョーなど、率いたすべてのチームで得点王を輩出してきたのも特徴のひとつである。

 これだけ成功例が生まれたら、手本にされないわけがない。風間が考案したL字型に3人が立ってパスを交換する練習メニューは、田中碧らのデモンストレーションによってSNSで拡散され、今ではあらゆる年代の選手たちが実施するようになった。

 いったい風間は技術をどう捉え、どのように独自の理論を創造したのだろうか?

 現在監督を務める南葛SC(関東サッカーリーグ1部所属)の練習場で話を聞いた。

「過去や経験にとらわれなければ、誰でもうまくなる」

 風間の技術論は非常にシンプルだ。

 小学生でも○×をつけられるように、技術を「見える化」することからスタートする。

 風間は数学を語るような明快さで言い切った。

「しっかりボールを止めろと言っても、人ごとに止める基準が違っていたら、その先に進めないですよね? 周囲が止まっていないと思うのに、本人が止まっていると言い張ったら議論になりません。僕たちが定義する『止める』は『自分がどこへでも蹴られるポイントにボールを完全静止させる』こと。そこから蹴る動作を0.5秒以内にやる。こうした明確な定義と基準があれば、全員の目をそろえられます」

全ての写真を見る -2枚-
特製トートバッグ付き!

「雑誌+年額プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています

photograph by Kiichi Matsumoto

0

0

1

この連載の記事を読む

もっと見る
関連
記事