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【内川聖一の視点】「近本、中野が6回に見せた盗塁が…」阪神2得点のシーンで注目したホークスの守備隊形とは?《日本シリーズ第1戦の詳細解説》

2025/11/05
6回、近本を二塁に置いて中野のバントが三塁線にピタリと止まる内野安打に
両リーグ覇者が11年ぶりに激突。1点を追う阪神は6回、近本を二塁に置いて中野のバントが三塁線にピタリと止まる内野安打に。無死二、三塁と好機を広げると森下の遊ゴロの間に同点とし、佐藤輝の適時二塁打で勝ち越し。最後は石井が締めて逃げ切った。内川聖一氏が勝負の分かれ目を解説する。(原題:第1戦 ソフトバンク1-2阪神 内川聖一「近本、中野が6回に見せた盗塁の効果」)

 野球は3アウトを取られる前に、いかにホームを踏むかというスポーツです。タイガースが2点を奪って逆転した6回表の攻撃では、ひとつの進塁がバッターやチームにいい影響を与えていました。

 1点を追うこの回、先頭の近本選手がセンター前のヒットで出塁すると初球スチールに成功しました。非常に大きなプレーでした。試合には勝負が動きやすいポイントがいくつかあります。5回を終えるとグラウンド整備やイベントなどが入り、ほかのイニング間の攻守交代より時間が空く。選手にとっても一瞬、ひと息つく間となり、「よし、ここから後半だ!」と気持ちを入れ直すタイミングでもあるんです。

内川聖一
内川聖一

 だから、6回表は流れが変わりやすい面があります。三塁線へのバント安打で二塁ランナーの近本選手を三塁に進めていた中野選手も二盗に成功して、無死二、三塁のチャンスを作りました。野球には「盗塁の効果」があります。アウトにならずに走者を進める方法が限られるなか、自分たちでどんどん展開を進められる。流れが生まれるし、タイガースの攻撃はその好例でした。

 ここで注目したいのは打席に森下選手を迎えたときのホークスの守備隊形です。セカンドを定位置よりも前に出してショートはほぼ定位置。1点リードしていたホークスとしては遊ゴロで同点になるのは仕方ない、でも、二塁ランナーを三塁に進ませたくはないという意図があったと思います。

 森下選手にとっては三振だけがNG。自分はアウトになってもいいから、まず1点取ることが仕事です。内角球を打って遊ゴロになったのですが、詰まったことが幸いして二塁ランナーの中野選手が三塁に進めた。ここが勝負の綾でした。内野ゴロで同点に追いついたこと、そしてランナーが三塁に進んだことで、次打者の佐藤輝選手も精神的に楽になりました。2点目の右中間への適時二塁打が生まれた要因でしょう。

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photograph by Kiichi Matsumoto

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