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「自己申告をしてでもイニングを投げたい」才木浩人のエースとしての葛藤と藤川監督の“親心”「先を見ながらの采配は本当に凄いと感じます」
安藤優也投手チーフコーチがマウンドに近付いて来るのを見ると、「また交代か……」と思ってしまう。まだまだ投げられるのに、降板を命じられる。力を残したままベンチに下がったことは数知れない。今季、エースにふさわしい活躍を見せながらも、才木浩人は常にストレスを抱えていた。
12勝目を挙げた8月24日のヤクルト戦でたまりにたまった思い込みに似た感情が露骨に表れてしまう。8-1の8回2死、118球で交代。あとワンアウトを任せてもらえないのか。マスクをかぶったまま近づいてきた坂本誠志郎に自嘲気味の笑みを浮かべる。右手に握ったボールを簡単に安藤コーチに渡さず、同学年の佐藤輝明にお尻をポンと叩かれ、ようやく諦めがついた。あとで大山悠輔にたしなめられたほど、不満げな態度を取っていた。
「その回の守備が終わって大山さんにベンチで言われました。『気をつけろよ』みたいな感じでした。試合中にああいうことを言われたのはプロに入って初めて。ベンチ裏だったら別ですけど、マウンドで、チームメートが見ている場所では良くなかったなと思いました」
開幕から目立った大崩れもなく、コンスタントに白星を積み重ねる一方で、不完全燃焼が続いていた。5月27日のDeNA戦は0-0の7回1死一、二塁でマウンドを降ろされた。117球を要していたとはいえ、自ら招いたピンチには自分でけりをつけたかったのが本音だった。
次の6月3日の日本ハム戦は1-0の8回99球でお役御免を言い渡された。完封へのチャレンジすらさせてもらえなかった悔しさがヒーローインタビューに表れる。翌日に先発する門別啓人に向けて、「完封できなかったので、完封しとけって言っておきます」とコメント。関西人を地で行くひょうきんな本人にすればいつものユーモアのつもりでも、もう1イニング投げたかったという思いがありありと出ていた。
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