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「自分の体をしっかり動かせる運転技術の向上が必要」元世界ミドル級王座・村田諒太が考える中量級制覇のための“4つの条件”とは「相手を怖がらせるには●●のパンチを」

2025/09/28
エンダム(左)との世界王座決定戦でストレートを放つ村田。ダウンを奪うも判定負けとなり再戦で勝利
井上尚弥を中心に活況を呈する軽量級に比べ、ライト級以上の世界王者は現在日本に一人もいない。世界のトップクラスにほとんど歯が立たない現状をどう打破すればいいのか。世界ミドル級王座を2度獲得した第一人者に打開策を聞いた。(原題:[日本勢の高き壁]村田諒太が考える 中量級を制するための4つの条件)

1 大きい選手も巧緻性の向上を

 6月に行なわれたWBO世界ウェルター級タイトルマッチ。KO率が高く、ウェルター級日本人初の世界チャンピオンへ周囲の期待が高まっていた佐々木尽選手でしたが、王者ブライアン・ノーマンJr.選手に5回KO負けという結果に終わりました。解説席からあの試合を見て、いろんなことを考えさせられました。

 ノーマンは自分の体を思うように動かすことができていて、ゆえにすべてのパンチが的確でした。史上初の3階級4団体統一王者となった(テレンス・)クロフォード選手がまさにそうで、ミット打ちでも小さくコツコツと当てていくやり方をしています。拳を自分の意図する場所に持っていく練習をしているんですよね。何よりタイミングを合わせて、正確に打つことを重視しているからでしょう。

 急所に当てるなら別に10割の力じゃなくて7割でいいわけです。クロフォードにしても、ノーマンにしても、全力でパンチを振って5cmズレてしまったら意味がないことを分かっている。パワーを乗せてバーンと打ち込むことが悪いわけではないにせよ、正確性が抜け落ちてはいけないということです。

 つまりは、自分の思いのままに体を動かせる「巧緻性」。小さな体のほうが大きな体よりもうまく動かしやすいのは明らかで、ボクシングでもそれは同じ。特に日本では階級が上がって体のサイズが大きい人ほど、巧緻性が低くなりがちです。

 欧米のボクサーに負けないよう体そのものの強度を増していくことも大事ですが、それだけでは排気量の大きい車をうまく運転できない。まずは自分の体をしっかり動かせる運転技術の向上こそ必要だと僕は考えます。ノーマンが佐々木選手を倒したボディーから左フックの流れは、まさに自分の頭に描いたことを正確にトレースしたもので、彼のボクシングには中量級の強化を考えるヒントがちりばめられていました。

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photograph by AFLO

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