'13年の入団時から一身にエースとしての期待を受け、近年は勝利数0の年も経験するなど、どん底も味わった。プロ9年目の今年、初めて任された開幕投手の大役。復活を期す背番号19の言葉には真っ直ぐな強さがあった。(初出:Number1029号藤浪晋太郎 [宿命を受け入れたスター] 「自分はスペシャルなんだ」)
縛りつけられていた固定観念から解放されたのは、最近のことだ。
「それまでは世間に求められている藤浪晋太郎を気にしすぎていた。インタビューとかでの堅いイメージもあって、真面目というか、品行方正でなければいけないなとか……。どう期待されているのかを考えて、それに応えようとしすぎて、自分で自分の藤浪晋太郎像に苦しんでいましたね」
二軍再調整が続いていた5月下旬、当人は過去の自分を労うかのように苦笑いした。
'12年秋にドラフト1位指名された瞬間から、背番号19はタイガースの未来を背負い続けてきた。大阪桐蔭3年時には甲子園春夏連覇。高卒1年目から3年連続2ケタ勝利。知らず知らずのうちに、エリート街道をひた走る煌びやかなイメージにのみ込まれていたのかもしれない。
疲弊しきり、どん底を味わった後、ようやくありのままの姿をさらけ出せるようになったのだという。
「今は割と自分に素直でいられています。考えすぎなくなりました。何かきっかけがあった訳でもないんですけど……経験とか慣れ、時間や年齢もあるんですかね。『いい子ちゃん』じゃなくていいやん、ぐらいの感覚になりました」
プロ9年目で初めて開幕投手に抜てきされた'21年。シーズン初戦から粘投を続けながら徐々に制球を乱した。4月23日の甲子園DeNA戦で5回途中まで7四死球2暴投4失点と暴れた後、二軍降格が決定。それでも鳴尾浜球場で再スタートを切った藤
浪に必要以上の悲壮感は見られなかった。
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photograph by Hideki Sugiyama