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<7年ぶりにプレーオフ圏外>“盟主”ヤンキースは14年遠ざかる世界一に復権できるか。【地区首位オリオールズと19ゲーム差】

2023/10/21
ジャッジ(左)は37本塁打を放ち今季も打線を牽引。もう一人の大砲スタントンは打率.191、24本塁打で戦犯に

 米球界の「盟主」と呼ばれてきたヤンキースが、'16年以来、7年ぶりにプレーオフ進出を逃した。'09年の世界一を最後に、過去14年間はワールドシリーズの舞台も踏んでいない。プレーオフ進出の可能性が消滅した際、今季から第16代キャプテンに就任したアーロン・ジャッジは、危機感を募らせるかのように、厳しい表情で言った。

「我々にはやるべきことがある。多くの変化、修正が必要だ。マイナーからメジャーまで、組織全員で取り組む必要がある。多くのことに取り組み、改善しなくてはいけない」

 今季の総年俸は、メッツに次ぐ2億7800万ドル(約403億円)。最激戦区のア・リーグ東地区とはいえ、開幕前は優勝候補に挙げられた。実際、開幕以降、快進撃を続けたレイズには及ばずとも、6月4日の時点で貯金「11」と、上位を狙える位置を維持していた。だが、夏場に入ると白星が続かず、8月半ばには9連敗を喫するなど、急速に下降した。

大事な試合でことごとく勝負弱さを露呈。

 昨季、球宴にも選出されたネストル・コルテスの故障、6月に完全試合を達成したドミンゴ・ヘルマンがアルコール依存症で離脱するなど、先発陣が不安定だったことだけが理由ではない。219本塁打はメジャー9位ながら、チーム打率は2割2分7厘で同29位、出塁率3割4厘は同27位と、長打に依存する大味な攻撃が顕著だった。その結果、延長戦で6勝9敗、1点差試合は17勝23敗と、接戦で苦戦を強いられた。同地区ではブルージェイズを除く他の3球団に負け越すなど、重要な試合でことごとく勝負弱さを露呈した。

 エースのゲリット・コールが15勝を挙げても、ジャッジが豪快弾を連発しても、162試合の長丁場で勝ち抜ける保証はない。アンソニー・ボルピ、オズワルド・カブレラら若手野手が台頭してきたプラス面もある。ただ、「常勝」できる底力を備えることは、一朝一夕ではかなわない。

 無論、らつ腕と言われるブライアン・キャッシュマンGMが、このまま黙っているはずはない。今オフ、ポスティングで米移籍することが確実視されるオリックス山本由伸の直接視察を済ませるなど、次の一手への準備にも着手した。地区制覇したオリオールズとの「19ゲーム差」をいかにして埋めるのか。今オフ、「盟主」の復権への動きは見逃せない。

photograph by Getty Images

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