鎌田大地は、まるで王様のように見られていた。
W杯メンバー決定前最後の活動となったドイツ遠征以降、攻撃の核となる彼をどう活かすかがチームのテーマとなっていた。
今シーズンのブンデスリーガで開幕から圧巻の結果を残していたからだ。あの時点で、進化の跡がクッキリ表れていた。例えば、開幕から9月の代表戦までのリーグでのデータと、昨シーズンのそれを比較すれば、ゴールを決める可能性が増大しているのは火を見るよりも明らかだった。
・1試合平均得点:0.13点→0.67点
・シュート数:1.1本→2.0本
・枠内シュート率:20%→58.3%
ドイツメディアでもたびたび「キング・カマダ」というニックネームが躍り、キングに合わせ、日本代表のフォーメーションも変更された。アジア最終予選の途中から定番となっていた4-3-3から、鎌田がトップ下に君臨する4-2-3-1へ。
この変更について、複数の選手がこんな感想をもらしていた。
「森保(一)監督はやはり、大地の良さを活かしたいのでしょうね」
あるいは、鎌田とポジションがかぶりそうな選手からもこんな声が聞こえてきた。
「チームとしてどうやって大地の長所を出させるのかというのは、僕らが上に行くための一つのカギになると思う」
実際、W杯では攻撃陣で唯一、全試合に先発。王様のような立場に置かれた彼は、日本代表の戦い方にも指針を与えていた。
2022年11月29日。グループリーグ最終のスペイン戦2日前だ。初戦でドイツ相手に金星をあげながら、格下のコスタリカに惜敗。チームに緊迫感が張りつめていた。そんな日の全体練習後のこと――。
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