第1回大会で突き付けられた、カリスマからの厳しいジャッジ。そこからスランプは続いた。彼らはいかにして立ち直り、他の漫才師を圧倒したのか。16年の時を経て詳細に振り返る。
チュートリアルの徳井義実はしみじみとした口ぶりでいった。
「M-1で勝つためには、ただウケるだけじゃダメなんです。圧倒的にウケるか、審査員をノックアウトするくらいのパンチ力がないと。決勝に残れなかった年も、そこそこはウケていたけど、そういう部分が足りなかったんでしょうね」
2006年12月24日――彼と福田充徳のコンビは、M-1グランプリ2006で審査する7人全員から支持を得て、大会史上初となった完全優勝を果たした。
チュートリアルが1本目のネタ「冷蔵庫」を披露している間、審査員の松本人志は頬を緩めっぱなしだった。心底から漫才を愉しむ松本をみて、当然チュートリアルにも熱が入る。
徳井は冷蔵庫を買った福田に絡む。
『何を冷やそかな~って考えてんの?』
『……お茶と水や』
『ポン酢もやろ~』
『確かに、ポン酢も冷やすけど』
『昼は漫才して、夜はポン酢冷やしてかい』
『なにが悪いねん!』
眼を剥き唇を尖らせ、尋常ならざる世界観を展開させる徳井。対する福田は呆れたり困惑の末、脂汗で顔がテカテカに光っている。両人の掛け合いは爆笑を生んだ。
4分間のネタが終了後、松本は95点を付け、「ほぼ完璧かな」と講評している。
16年の歳月を経て、徳井は懐かしそうに振り返る。
「松本さんに褒めていただきめちゃくちゃうれしかったです。やっぱり僕ら世代がダウンタウンさんに影響を受けたのは否定できないところ。その分、松本さんへの信頼度は半端じゃない。審査基準として松本さんの評価を絶対的に信用していました」
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photograph by Takuya Sugiyama