リードに正解はない――インコースにストレートを続けるリードも、打たれれば単調だと酷評され、抑えれば強気だと称賛される。だから、と言って伏見寅威はこう続けた。
「配球に関しては、悔いが残った、とは思わないようにしています」
スワローズが山田哲人を1番に入れたのはノーヒットの山田にきっかけを掴んで欲しかったからだ。逆にバファローズは山田にきっかけの欠片も与えてはならない。伏見は山田の第1打席、宮城大弥に外角を要求した。そして3球目は内角に構えながら143kmのストレートが外に流れて、山田が芯で捉える。打球は正面を突くサードゴロとなって、まずは山田を打ち取った。第2打席は一転、スローカーブ、チェンジアップ、スライダーを低めに集めての6球目、伏見は初めて山田の懐に構えた。結果、内角のストレートで詰まらせたのだが、それが幸いしたシリーズ初ヒットが復調のきっかけになったと言うのなら、それは次の打席がホームランだったからだ。
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photograph by Nanae Suzuki