現在の人気に辿りつくまで、決して平坦ではなかった女子MMAの歩み。“女子”であるが故に抱いた葛藤を明かしながら、黎明期のレジェンドが振り返った。
21世紀、最も変化し成長した格闘技のカテゴリーは“女子”、とりわけ女子MMA(総合格闘技)だろう。
ビッグイベントでも女子の試合が組まれ、RENAはRIZIN参戦によって男子のトップ選手にも負けない人気を誇るようになった。2022年7月31日の『RIZIN.37』では2度目の女子スーパーアトム級GPが開幕。大会セミファイナルに同級前王者の浜崎朱加、メインイベントに現王者の伊澤星花が出場し、揃って勝利を収めた。男子も女子も関係なくチャンピオンがメイン。そういう時代になったのだ。
「私の現役中とはだいぶ変わりましたね」
そう語るのは藤井惠。女子MMAのパイオニアかつレジェンドだ。MMA戦績は29戦してわずか3敗。'13年に引退、結婚し、現在は広島県福山市のジムで夫の佐々木信治とともに後進を指導、RIZINの中継では解説を務めることも。この世界の黎明期から現代の最前線までを知る生き証人と言ってもいいだろう。
幼少期から柔道を習い、国士舘大学に進む。就職するとソ連発祥の格闘技サンボを始めた。そこからレスリング、柔術、グラップリングなどさまざまな競技に挑戦する。'90年代後半から'00年代初頭、女子の“闘う場所”が増えていった時代だ。
同じ頃、女子総合格闘技ムーブメントも勃興していた。藤井が「特にインパクトがありました」と語るのは、'00年開催の『Re-Mix』での藪下めぐみだった。藤井より2つ年上のプロレスラーで、やはり柔道出身の藪下は、トーナメント準決勝でロシアの超重量級選手グンダレンコ・スベトラーナに勝利してみせた。
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photograph by Yuki Suenaga