トミー・ジョン手術から3年半、今シーズンはいよいよ投手・大谷が100%の力を解放するのか。メジャーのマウンドを知る岡島秀樹&五十嵐亮太が二刀流右腕のさらなる伸びしろを検証する――。
岡島秀樹「“足”を見れば、状態が分かる」
大谷投手の状態の良さは、ピッチングの時の「足」を見るだけで分かるんですよ。
アリゾナキャンプ中のブルペン投球や打撃投手として登板した際の映像を見ましたが、ピッチングが非常に安定していました。まず、軸足である右足にしっかりと体重を乗せて力をためている。この時の“間”は長ければ長いほどいい状態です。悪い時は力が乗り切らない分、体の開きが早くなり、バッターにリリースポイントが見やすくなってしまいますから。
その状態から体重移動をしていき、今度は左足1本を軸としてくるっと回転する。右足から左足へと連動し、力がしっかりと伝わっていっているのがよく分かります。2019年の秋に左ひざを手術し、直後の'20年シーズンは左足をかばって踏ん張り切れない分、体重移動の効果が半減しているなと感じていました。しかし、そこからしっかりとトレーニングをして下半身を鍛え上げてからは、踏み出した後の左足がちゃんと踏ん張れている。力が逃げずにしっかりと上半身、そして指先のリリースポイントへと伝わっているんですね。
ブルペン投球では、球筋が狙ったところよりほんのわずか、カット気味に入っていました。これも大谷投手の状態がいい時の特徴で、その変化が打者によりボールを捉えにくくする。逆球が少ないのもいいですね。僕も経験がありますが、この時期のアリゾナは非常に乾燥していて、ボールが滑る。おそらく投手にとって一番投げづらくて嫌な場所かもしれません。その環境で、しっかりと指がかかった投球ができているのは、仕上がりの良さの現れだと思います。
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photograph by Yukihito Taguch