日本シリーズ4戦目の勝利は観る者はもちろん、自身にも勇気を与える快挙だった。不惑を超えた“小さな大投手”は、反骨心と向上心を胸に、節目の200勝を目指して腕を振り続ける。
長い間の無沙汰を詫びると、電話の向こうで石川雅規が冗談めかして言った。
「まさかまだやってるとは! ですよね」
コロナ禍のため電話取材になったのは残念だが、話を聞くのは17年ぶりのことだ。2005年2月、プロ4年目を迎えた25歳の石川に長時間インタビューし、秋田のご両親や高校、大学の恩師の話も交え、彼の物語を書かせてもらった。そのときの原稿の最後を締める石川のセリフがある。
『大きい人に負けたくない気持ちは、今でも強いですね。無理だよって思われることを覆したい。プロ入り前にある人から、お前は10年できないよって言われたけど、絶対にやってやるよって思う。40歳までやって、アイツ、ちっちゃいのにまだやってるよって言われたいんです』(『Number622号』)
石川はこのときの発言を見事に実現しているばかりか、超えてしまっている。
1月で42歳になった。167.5cmの小さな体で20年、ほぼ全てのシーズンで先発の一角を担い、プロ入りから5年連続二桁勝利を挙げるなど積み上げた勝ち星は177。ストレートの球速は130km台前半ながら、多彩な変化球を操り打者を幻惑していく投球術は年々円熟味を増している。その原動力を聞くと、彼は当時と同じことを言った。
「大きい人に負けたくない気持ちはいまだに変わりません。幼い頃から『体が小さいから無理だよ』と言われるたびに、だから何だ、負けてたまるかって。何とか見返してやりたいという思いでやっていたら、21年目になっていたという感じなんです」
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photograph by Nanae Suzuki