#1043
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[世界王者の葛藤]ネイサン・チェン「勝機は過去の己の中に」

五輪シーズンの幕開けは、まさかの滑り出しとなった。世界選手権3連覇中の絶対王者にも、試練の時が来た。襲い掛かる重圧、選択の苦悩。煩悶の先に待つのは、夢舞台での栄光か。全米選手権を前に思いを明かした。

 12月20日、1月に行われる全米選手権に向けてネイサン・チェンのリモート会見が行われた。

「グランプリ(GP)ファイナルが中止になったのは、とても残念でした。でも皆の健康と安全が第一なので、中止は仕方のないことだったと思っています」

 カリフォルニア時間で夕方5時に取材に応えたチェンはまだリンクにいたため、マスクをつけたままで話し始めた。最後に出場した大会であるスケートカナダからもう2カ月近く経過した。GP2試合から現在まで、どのように調整をしてきたのか。

「自分の演技でどこがもっと上達できるのか、何がうまくいって、何が良くなかったのか、というようなことを分析しました。こうしたことを煮詰めていき、コーチと話し合って次の大会に生かすためです。たとえ勝っても負けても、それまで積み重ねてきた全てを投げ捨ててやり直し、というわけではない。現在の自分の位置に満足しているし、ここからさらに先に進んでいきたいと思っています」

 チェンはそう語ったが、この会見で焦点となったのは、今季のプログラムをどうするのか、ということだった。

 今季の初戦だったスケートアメリカで、チェンは予想外のスタートをきった。ショートプログラム(SP)で2度ジャンプの失敗をして4位という順位に。フリースケーティングでは久しぶりに4回転ループも入れて、4回転を合計6本予定していた。そのうち4本成功させてフリーは2位と挽回したものの、総合3位に終わった。

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photograph by Getty Images

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