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[今世紀初の新人3割&20発男]牧秀悟「記録にも記憶にも残したい一打」

2021/12/04
幾多の“新人離れ”ルーキーさえ跳ね返される“プロの壁”。そんな常套句を地力で越えて行く痛快な活躍だった。長嶋茂雄のもつセ・リーグ新人最多二塁打34本を更新し、清原和博以来となる新人「3割20本塁打」達成……。世代を画す記録づくしの今季を、新ハマの広角砲が回想する。

 シーズン最終打席は、敬遠ぎみの四球だった。外角に大きく外れた4球目の軌道を恨めしそうに見届けると、牧秀悟はぎゅっと両目をつむってから一塁に歩き出した。

「最後は打って、ヒットかアウトか。どっちかがいいなと思っていたので……なんとも言えない感じでした」

 相手投手、カープの大瀬良大地にしてみれば、完封での2ケタ勝利がかかった最終回のマウンド。無用なリスクを避けたであろうことは容易に想像がつく。

 同時に、リーグ屈指の好投手が、まだプロ1年目の23歳を危険な打者と判断したこともまた、十分に理解できる。

 打率.314、22本塁打、71打点。新人として史上初のサイクル安打達成。また、二塁打を35本放ち、長嶋茂雄が持っていたセ・リーグ新人記録を63年ぶりに更新した。

 昨年ドラフトで2位指名を受けて入団。侍ジャパン大学代表で4番を打った右打者への期待は高く、春季キャンプから一軍でその素質を見極められた。

 丸太のような太ももに支えられた、安定感のあるフォーム。積極性と確実性の共存。プロの世界で埋没する存在でないとの見方を得るまで、時間を要さなかった。

 事実、開幕から打ちまくった。対戦カードが一巡した4月11日終了時点の打率は.383。なかなか勝てずにいたベイスターズの、貴重なポジティブ要素だった。

 だが、徐々に好転したチーム状況に反して、牧の調子は下火になる。連戦の疲れが原因だった。

「4月の終わりから6月の初めまでがいちばんきつかった。試合が毎日続くことに慣れていない体だったので」

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photograph by Hideki Sugiyama

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