日本人投手として初めてワールドシリーズで登板。世界一を知る名左腕を驚嘆させたのは、斬新な「リアリスト」としての投手・大谷だった――。
大谷君の投球、オールスター前後で変わりましたよね。
開幕から6月くらいまでは、とにかく三振を狙いに行っていたので、制球が定まらない試合もあったわけです。ゲームを作るという意味では不安定だったわけで、自分が早めに降板すると打席にも立てないから、そうするとつまらないと気づいたんじゃないですかね(笑)。
後半戦の安定をもたらしたのは、変化球の質の向上でしょう。もともとスプリットはキレがあって、三振を狙える球でした。問題はカウントをどう整えるかということで、ここで柱となったのはスライダーとカットファストボール(カッター)です。
大谷君のスライダーはキレが良いので、抜けてしまうことも珍しくないんです。そうなると、カウントを整える球種にはなりにくいし、捕手もサインを出しづらくなります。私が注目したのは、6月17日のタイガース戦です。ここからスライダーの質が変わったんです。
この日は、それまで柱となっていたスプリットの精度が低く、カウントを稼ぐ球としては使いづらかった。一方でどういう理由かは分かりませんが、それまで抜けがちだったスライダーの曲がりが良くなり、質が向上していました。右打者の外角へと逃げていく球、そして左打者の外角への「バックドア」と呼ばれる、外から内に切れ込んでくるスライダーともに捕手のミットにすべて収まっていく感じで、両サイドの制球が完璧と言っていいほどでした。これでスプリットを見せ球にして、スライダーで勝負するパターンを確立したと見ます。
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