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[名キッカーに聞く]中村俊輔「セットプレーで1点、の重さ」

2021/09/25
観客6万人を動員した、南アW杯アジア最終予選カタール戦にて。2009年6月10日、日産スタジアム
イタリア、ドイツ、デンマークなど世界のサッカーシーンでは、セットプレー専門コーチを招聘するのがトレンドになっている。日本もセットプレーが強化のポイントであるのは間違いない。今もなお、海外メディアやファン投票の「歴代フリーキッカーランキング」で上位に入る、ナカムラ。日本人で最も優れたフリーキッカーと言える彼に、現代サッカーにおけるセットプレーの位置づけ、自身のこだわり、日本代表とセットプレーの未来、この3つについて聞いた。

其の一 現代サッカーにおけるセットプレー

 セットプレーはかつて日本の大いなる「武器」であった。

 ライバル韓国からゴールを奪った木村和司の伝説のFK、南アフリカW杯デンマーク戦での本田圭佑、遠藤保仁“ダブルFK弾”、ロシアW杯コロンビア戦ではCKからの大迫勇也の決勝ヘッド……。

 良質なキッカーとチームメイトとの連係。日本代表で長年「10番」を背負い、それを成熟させた功労者が中村俊輔である。

 だが時代は変わり、「崩し」「流れ」からのゴールにこだわりを向ける一方でFKやCKなどセットプレーは以前ほど重視されていないように映る。A代表ではキッカーが流動的で、U-24代表が臨んだ先の東京五輪ではFK、CKからの得点がゼロに終わった。この現状を彼は一体どのように見つめているのか――。

 確かに現代サッカーではセットプレーを重んじる流れじゃないのかもしれない。世界的な傾向から、日本もその影響を受けてきていると捉えることができる。

 GKからつなぐチームが増えてきて、ショートパスが多用されるようになった。ロングパスやサイドチェンジ、スルーパスを得意とする選手よりも、オシムさんの評価基準でもあったプレー強度が高く、走る質の高い選手のニーズが上がっているように感じる。

 献身的に、かつ賢く動く「走る→味方にショートパスを出す→また走る」を繰り返す“ショートパスラン”だと、ロングパスやサイドチェンジに比べるとミスを起こす確率が少ない。相手からすれば最も嫌なのは「好きに走られること」なので、それだけで脅威を与えることにもなる。

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photograph by Takuya Sugiyama

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