読み進めると、興奮を抑えられなくなった。ここ数年、メジャーリーグで叫ばれていた「フライボール革命」や「回転数」といった事象が、ストーリーとなって立ち上がってきたのである。
球団の強化方針を一変させた『マネー・ボール』が発売されたのは2003年だったが、それはもはや石器時代の話。この本の中で「多くの人は気づいていないが、いまマネー・ボールにのっとってチーム運営をしていたら、そのチームは徹底的にやられるだろう」とある球団のデータ分析担当者がいう。
では、いまはなにが重要なのか。「情報」と「成長」である。
この本で存在感を示すのはトレバー・バウアー(ドジャース)だ。彼は高校時代から進歩的な発想の持ち主だったが、「エッジャートロニック」と呼ばれる高性能カメラを入手し、投球を進化させていく。驚いたのは、'18年のシーズン中にスライダーの改良に成功した話だ。私が最もメジャー取材をしていた2000年代、「新しい変化球の実用化には1年ほど必要だ」という声を聞いていた。ところが、バウアーはテクノロジーの力を借り、数カ月で超一流の球種をマスター。彼は情報を成長へと変える最先端を走っていた。
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photograph by Sports Graphic Number