戦前の日本は、植民地として朝鮮と台湾を統治した帝国であった。そのため、当時の甲子園や都市対抗野球は朝鮮でも予選が開かれており、本選で活躍した朝鮮人もいる。オリンピックの日本代表も同様であり、1932年のロサンゼルスと'36年のベルリン五輪には数名の朝鮮人選手がいた。その中で日本初のマラソン金メダルを手にした朝鮮人・孫基禎が本書の主人公である。
そんな孫の波乱に満ちた生涯を扱った本書は、1912年に朝鮮半島北部の新義州で生まれマラソンで頭角をあらわす過程からベルリンでの活躍とその後の「日章旗抹消事件」、戦中の対日協力、そして解放後の韓国での指導者やスポーツ界の重鎮としての活動までを描く。さまざまな一次資料を駆使しながら時代背景を丁寧に論じることで、日本と朝鮮の近現代史の本としても読める点が特徴となっている。
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