メンタルは鋼のように強くあるべき――。そんな古い常識を覆したのが、2011年の東日本大震災直後に出版された、長谷部誠の『心を整える。』だ。
Jリーグ最終節前日に眠れず優勝を逃した。ストレスが溜まると腹痛と高熱に悩まされる。家族を招待した2軍の初試合で出番がなく監督を恨んだ……。当時の日本代表キャプテンが、著作内でこれでもかと弱みをさらけ出し、同時にそれを克服するための「56の習慣」を紹介。アスリート本としては異例のミリオンセラーになった。
競泳選手として北京五輪とロンドン五輪に出場し、'12年の引退後にはアスリートのメンタルの研究を行なった伊藤華英も同書を愛読したひとりだ。
「私は大宮出身で家族ぐるみの浦和レッズのサポーター。もともと長谷部選手のファンだったんですね。トイレにJリーグ優勝のポスターを貼っていたほどでした。誕生日が同じという縁もあり、すぐに購入して一気に読みました。オンとオフ双方の気持ちのマネジメント方法がびっしり書かれていて、『生活から練習までここまで細かく決めてるの?』と驚いたのを覚えてます」
儀式と呼びたくなる完成度のルーティーン。
発売当時、伊藤はオリンピアンとしてすでに多くの経験を積んでいた。それでも得るものがたくさんあったという。
たとえば試合前のルーティーン。長谷部はスタジアム到着の約7分前からミスチルの名曲「終わりなき旅」を流し始め、曲が終わったときにちょうどスタジアムに着くようにする。ピッチに足を踏み入れるときに「じいちゃん、今日もよろしく」と天国の祖父に挨拶をし、戦いのスイッチを入れる。そのプロセスは“儀式”と呼びたくなるほど完成されていた。
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