#997
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<バルサに愛を込めて> 森山直太朗「そしてイニエスタを語る」

2020/02/13
お気に入りのバルサのサードユニフォームと、2010年W杯決勝の劇的なゴールが描かれたイラストとともに。
メロディーに乗ってバルセロナの選手が登場し、サビでは“魔術師”イニエスタの名前を連呼。サッカー好きからも愛される一曲はいかに誕生したのか。(Number997号掲載)

そしてイニエスタ シャビでもなくて
そしてイニエスタ メッシでもない
そしてイニエスタ 白い小さいマタドール

『そしてイニエスタ』(作詞・作曲:森山直太朗&御徒町凧)

『そしてイニエスタ』が生まれたのは2011年の東日本大震災がきっかけでした。東京もまた被害があったり余震が続いたりしているなか、心のどこかで「自分にできることはないだろうか?」と考えるんですが、そんなぼんやりとした想像さえも呑み込まれてしまうほど疲弊しきっていました。

 そんな折、元々サッカー部の後輩で楽曲の共作者でもある御徒町(凧)から2つの作品の原案を渡されました。ひとつが『今ぼくにできること』。これは当時のリアルな感情を辿った歌でした。無力なときや混乱しているときほど人の想像力は苛まれてしまいますよね。でも呼吸したり、眠ったり、躊躇ったり、悩んだり、祈ったり……無意識にしているそのひとつひとつが「できること」で、決して無力ではないんだという希望が綴られた歌でした。

 もうひとつが『そしてイニエスタ』。実際最初は「へ? 何これ?」とは思いました。

 その当時僕たちは深夜によく馴染みのイタリア料理屋に行ってバルセロナの試合を観たりしていて、倉敷保雄さんの実況を聞いて痺れていました。並々ならないポエジーがあるんですよ。「ブスケッツが子供を奪われた親猿のように(ボールを)追い掛け回しています」みたいな(笑)。バルサのお家芸でもあるパス回しのときとか「シャビ、メッシ、そしてイニエスタ」って言っていて、ほかの実況でもよく聞くんだけど、なぜかイニエスタの前だけ「そして」が付く。これは無意識のフレーズとして我々の耳にずっと残ってました。

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photograph by Ichisei Hiramatsu

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