優れたアスリートは過去と未来をつなぐ。この背の高い日本人のごとく。
北海道日本ハムファイターズの遠い前身、セネタース以来の長きファンが、大谷翔平の打撃フォームを本稿筆者にこう評したことがあった。
「まるで大下弘だ」
青バットの伝説の名手。敗戦の1945年、明治大学から新球団のセネタース入り、端正で雄大な打法が、生活の困窮にあえぐ庶民の絶大なる支持を得た。
みんな左の打席から高々と舞い上がる打球を目で追った。いっせいに首が天を向く。
「そのとき空襲のない青空がよみがえったのです」
小さく畳まれた肘。瞬発力を包む遊びのある全体の構え。バットが球をとらえるや上半身は弓のごとく反る。指は最後までグリップを離れようとしない。そのスイングを文献や映像で確かめたら、なるほど大谷のひと振りと似ているような気がしてくる。
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photograph by KYODO