短編の名手で児童文学作家ダールの青年期の自伝。前半は、「自分にとって忘れがたいと思われる体験だけ」を書いた石油会社シェルの東アフリカ勤務の日々。後半が、「少なくともわたしにとっては文句なしに魅惑的だった」第二次大戦で戦闘機乗りとしてイギリス空軍に勤務した体験のすべて。この2つが一体になり波乱万丈かつクールな“冒険記”でもある。
ロンドンの本社で3年目を迎えた22歳の著者は1938年に念願の東アフリカ勤務を命じられた。現在のタンザニア、第一次大戦後ドイツ領からイギリス支配地となった“植民地”だ。未来の作家の植民地での生活、支配と差別のあれこれを……になりそうだが、そんな記述は一切ない。書いたのは、人を襲う毒蛇ブラック・マンバ、グリーン・マンバのそれぞれとの対決とコックの妻をくわえて運ぶライオンを追跡する3つの出来事。そして開戦に伴い著者と、著者に忠実な召使の少年が体験したおぞましくも恐ろしい事件だけ。乾いた文章に漂う皮肉とユーモア、「奇妙な味」と評される著者の短編小説そっくりだ。
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