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人間対イノシシ。勝利への秘策はあるか。 ~『猪変』に記された取材報告~

2015/06/02

「スポーツ本ではない」と言われれば、その通り。しかし、不謹慎を承知でいえば、本書は人間対イノシシのゲーム(試合)記録だ。人間が知恵を絞り、人力、税金を投じて戦いを挑んでも、中国地方のイノシシ軍団を抑えきれない。山中から、里へ、畑へ、街中へ、海を泳ぎ渡り瀬戸内海の島々にもイノシシは進出する。人間チームは苦戦続き。

 人口が減り山里の農家は高齢化。獣の棲みかと人里、農作地の境界で炭、薪の供給地だった里山はその需要がなくなり人手が入らず荒れ果てた。放棄される畑も増えて、イノシシが押し寄せた。オレンジの輸入自由化で遺棄された島のミカン畑は上陸したイノシシの食堂になった。自然保護か、害獣駆除か。縦割り行政の中、田畑を守ろうと苦心する村や町の担当者。駆除に協力する猟友会も獲物は法律で食品として流通が限られ、埋めるばかり。イノシシ研究の学者も少なく生態もはっきりしない。人間チームは守備態勢すらおぼつかないのである。

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photograph by Sports Graphic Number

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