ちょっと謙虚すぎやしないかい、ブライアン・オーサーよ。現役時代のあなたは頑なにトリプルアクセルにこだわり、カルガリー五輪の男子フィギュアではボイタノとのブライアン対決を熱演した。氷上のあなたは、いつも陽気。そして、自己顕示のオーラを全身から放ちながら観客との一体感を誰よりも愉しんで滑る男だった。
かつてのファンは、この本を読んでブライアン・オーサーが重ねた年月を知るのだろう。もちろん新しいスケートファンは羽生結弦の、キム・ヨナのコーチとして存在感を示す彼の内側を知るはず。
「負け犬」と呼ばれたオーサーが辿り着いた謙虚の姿勢。
彼と羽生との師弟対談で幕を開ける本書は、「コーチとしてオリンピック2連覇」を果たしたオーサーがどのように個々の選手たちを教え導いてきたのかを明らかにする。毎日泣きながら練習を重ねたキム・ヨナの逸話。体力のない羽生にスタミナをつけさせるのではなく、スタミナを消費しないスケーティングを徹底したこと。カナダのトロント・クリケット・クラブを拠点にするチーム・ブライアンには完璧な化学融合があった。
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photograph by Wataru Sato