Number857号に掲載された『World Cup 敗北の研究』より、アギーレ監督の母国・メキシコの柔軟な戦いぶりについて関塚隆氏が分析した記事を特別に公開します。
解説者としてブラジルW杯を見るときは、やはり日本が今後どうやって戦ったらいいのかという視点になる。フランスのポグバのように190cmの身長があり、守備も攻撃もできるような選手がいれば素晴らしいが、求めてもなかなか出てこない(笑)。
日本人とサイズが似ていて、かつ、魅力的なサッカーをしているのがメキシコだ。今大会で印象に残っているのは、グループリーグ第2戦。ホームのブラジルに対して怯むことなく真っ向勝負を仕掛けて0-0で折り返すと、後半に攻撃のスイッチを入れ、ブラジルをあわやと脅かすチャンスも作っていた。
オチョアのスーパーセーブも素晴らしかったが、攻撃の形も見逃せない。それまでの攻め方を変え、この試合はあまり守備に戻らない右サイドを徹底的に狙ってきた。ネイマールはトップ下に移り、逆サイドのオスカルはしっかり守備に戻る。穴は右サイドしかないと見極め、先発選手を代えることなく試合の中で流動的に変化をつけてきた。0-0に終わったが、あと一歩まで王国を追い詰めた。
こういう戦い方は、日本では「自分たちのやり方を変えた」と批判されることもある。だがサッカーはマッチアップする相手との力関係で戦うものであり、90分の勝負に勝つためには、チームの戦術の上にこうした柔軟性を持つことが大切になる。
メキシコに注目するようになったのは、4年前の南ア大会。アギーレ監督の下、メキシコはシステムに固執することなく非常に変化のある興味深い戦い方をしていた。基本は4バックだが、右サイドはサイドバックが上がり、左サイドはボランチが上がる。この変則的な攻撃でベスト16に進んだメキシコが、今回どう臨むのか楽しみにしていた。
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