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<侍ジャパンの大黒柱、苦闘の軌跡> 阿部慎之助 「重き荷を背負って」~戦いが終わって思うこと~

2013/03/27
4番で正捕手でキャプテン――名実ともにチームの中心選手として
3つの責任を背負い、懸命に自分を鼓舞して重圧と戦ってきた。
戦いが終わり夢破れたいま、リーダーの胸に去来する思いとは。

 自分らしさとは何なのか。

 阿部慎之助は、ずっとそのことを考えながら、過ごしてきた。

「やれることはやったと思う。でも、負けたのはやっぱり悔しい」

「やり尽くしたという感じはないですね。だけど、色々なことがあって、自分では精一杯やってきたつもりです。自分はイチローさんとは違って背中で引っ張っていくタイプではないし、先頭に立ってみんなを盛り上げてきたつもりでしたから。そういう意味で悔いはないし、やれることはやったと思っている。でも、負けたことはやっぱり悔しいです」

 準決勝のプエルトリコ戦に敗れた直後、阿部は静かにこう語った。

 4番で捕手でキャプテン――。

 一人で3つの重責を担って臨んだ大会だった。その中でその3つの顔を使い分け、3つの役割をこなし、3つの責任を負わなければならない。阿部自身にとっても、実際問題としてすべてを完全にやり遂げるのは至難の業であることは分かっていたはずだ。

 だがあえてそれに挑戦し、走り続けてきた2カ月だった。

 ただ、そのことがかえって、阿部慎之助らしさを見えにくくした一つの原因だったようにも思える。

打撃の調子が上がらない阿部を襲った、右ひざの古傷の再発。

Shinnosuke Abe
1979年3月20日、千葉県生まれ。中央大を経て'01年ドラフト1位で巨人入団以来、強肩強打の捕手として攻守に活躍。昨季は首位打者、打点王、MVPなどを獲得する充実の1年だった。シドニーと北京五輪、第2回WBCでも代表選出。180cm、97kg。

「長かったし、しんどかったです。自分の状態がはっきり言ってダメでしたからね。間合いがとれないし、自分でも混乱していました」

 2月15日の代表合宿初日から、ずっと打撃の調子が上がらず、まず4番・阿部としての自分を見失いかけた。しかも大会開幕を3日後に控えた2月27日には、右ひざの古傷再発というアクシデントにも襲われた。

「アップをしていたら右ひざからバキって音がした。これで終わったと思いました」

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photograph by Yukihito Taguchi

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