苦闘の連続だった中国での1年目のシーズンが終わった。
指揮官の地道な指導により、変化の兆しを見せる選手たち。
その手腕に周囲の信頼も厚い。かつて日本を率いた男は、
来季もこの国のサッカーの未来のために心血を注ぐ。
指揮官の地道な指導により、変化の兆しを見せる選手たち。
その手腕に周囲の信頼も厚い。かつて日本を率いた男は、
来季もこの国のサッカーの未来のために心血を注ぐ。
改革の過程に、オフなどない。
11月下旬、岡田武史は日本にいた。
中国スーパーリーグ、杭州緑城のU-19、U-17ユースチームを引き連れ、静岡県・御殿場で強化キャンプを張っていた。
“全権監督”は、U-19、U-17のユースチームの練習まで取り仕切る。
夕方、寒風吹くグラウンドではU-17の紅白戦が行なわれていた。響き渡る指揮官の喚声。いいプレーをすれば「グッド!」、悪ければ嘆息とともに表情をひん曲げる。感情豊かな大きなリアクションに反応するように、段々と若芽たちのボルテージも上がって声を出していく。冷気を熱気が追いやっていた。
「みんないい声が出てたかな」
ユースも統括する“全権監督”はグラウンドを出ると、そう言って白い歯をこぼす。だが時計に目をやると、別のグラウンドで練習していたU-19の報告を聞くためか、足早に消えていった。その足取りは軽やかだった。
中国1年目のシーズンは終わった。
岡田率いる杭州緑城は、結局16チーム中12位にとどまった。序盤には最下位まで沈みながらも一時5位まで浮上。そこから再び下降線を辿って残留争いに巻き込まれたものの、終盤戦の奮闘で何とか持ちこたえた。下がって上がってまた落ちる。そして最後にちょこっと上がる。その成績の波形を眺めるだけで岡田の苦闘ぶりが伝わってくる。
日本と中国では文化も思想も違う。システムも違う。その中で岡田はもがきながら、違いよりも不変なものを見出そうとし、チーム改革を断行しようとした。痛みも伴った中国1年目の聖域なきチャレンジ。そこで岡田武史が得たものとは――。
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photograph by Masahiro Fukuoka