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<“走る医学博士”の理論> 田中宏暁 「体力より知力で速くなる」

2012/09/20
「身体だけでなく、頭も使って走りたい!」
そんなランナーの皆さんに向けて、
雑誌Number Do『大人の山登り。~ゼロから楽しむ入門編~』では、
「走る」を自分なりのやり方で追い求めてきた、
日本記録保持者、大学教授、そして作家の思考法を特集しました。

今回は、50歳にして2時間38分48秒の自己ベストを達成した
“走る医学博士”田中宏暁教授の実践型講義を特別に公開します。

 37歳の初マラソン。半年間みっちり走りこみ、タイムは4時間11分01秒。このとき、体重は50kg台後半。

 9年後、46歳で2度目のマラソン。このとき、月間走行距離は40km程度、メタボになって体重は64kgに増加。にもかかわらず、タイムは3時間30分03秒と、40分以上も短縮した。

 これは、福岡大学で運動生理学を研究する田中宏暁教授の実体験だ。田中教授は、数多くの学生や患者の運動データを集めて分析し、1つの仮説を組み立てていた。そして、自らを実験台に、その仮説を実証したのだ。

“35kmの壁”は前半アクセルを踏みすぎて、ガス欠になっただけ。

「マラソンには、“35kmの壁”があると言われます。その壁を越えるには、苦しい走り込みを繰り返し、自分の限界に挑むトレーニングしかないと思われています。

 でも残念ながら、その考えは間違っています。“35kmの壁”は、燃料を使い過ぎてガス欠を起こしただけ、前半でアクセルを踏みすぎて燃料を無駄遣いしているに過ぎません。

 人間が走るメカニズムを理解し、その理屈に従って『賢く』走れば、苦しいトレーニングは必要ありません。誰でもフルマラソンを完走できるようになりますし、誰でも記録を伸ばすことができます。しかも、賢く走ればレース中も苦しくない。楽に走れて記録も伸びる。賢く走るのはいいことずくめです」

 人間が走るのも、クルマと同じように考えると分かりやすい。クルマの走りを左右する要素は複数ある。エンジン性能、燃料、車体、タイヤ――。決して、忍耐と根性がクルマを速くすることはない。

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photograph by Asami Enomoto

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