#786
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<ラグビーW杯・日本代表主将の決意> 菊谷崇 「過去も未来も考えない」

2011/09/09
長いラグビー人生のなかで、ただの一度も務めたことのない主将の責務を
任された。日本を代表する強烈な個性揃いの集団を、彼はいかなる手段で
まとめ上げてきたのか。すべての準備を終え、戦いを目前に控えた今、
ジャパンを導く男――菊谷崇が決意を語った。

「本日は、天候の悪い中、たくさんの人に集まって頂いて、気持ちよく送り出して頂こうと思って、チーム一丸で頑張ったんですけど……情けない試合をしてしまいました」

 降り続く雨でずぶ濡れになったまま、マイクを握った菊谷崇は、誠実な口調でスタンドに向かって呼びかけた。

 8月21日。雨の東京・秩父宮ラグビー場には1万2519人の観客が詰めかけた。東日本大震災の影響で、日本代表が今年、国内で行なうテストマッチは7月のサモア戦に次ぎ2試合目だった。NZで開催されるW杯の開幕まで3週間。日本代表に期待を寄せて良いのか――そんな思いを胸に集まったファンの前だというのに、ジャパンのパフォーマンスは冴えなかった。

 キックオフのボールをいきなり落球。そこからアメリカの連続攻撃を粘り強いタックルでしのぎ、FB上田泰平のトライで先制したと思ったら、直後のキックオフで目測を誤り、相手WTBスウィリンにノーホイッスルトライを許す。CTBニコラスのPGで再逆転した後も、圧倒的に攻めながら反則でトライを取りきれず、カウンターアタックのミスから再びスウィリンに独走トライを献上。ジャパンは前半を8対14の劣勢で終えた。

1トライ1ゴールで逆転という点差まで追い詰められた冷や汗の勝利。

 後半はSH日和佐篤、PR畠山健介、HO堀江翔太らを投入してリズムを取り戻し、14分に菊谷、26分にはWTB宇薄岳央のトライで20対14としたが、そこからアメリカの猛反撃を浴びる。ラストの時間帯は相手陣深くから日本陣ゴール前まで攻め込まれ、トライとゴールを奪われれば逆転負けという冷や汗の勝利。スタンドからは「ジャパンしっかりせえ!」と、辛辣な声も飛んでいた。

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photograph by Takuya Sugiyama

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