冬を送る一輪の花身内(みうち)より白きタイルに鼻血おちたり
この岡部桂一郎の短歌を、競馬と同じくらいボクシングが好きだった寺山修司はボクサーを詠んだものと解釈した。戦い終えたボクサーがシャワールームで下を向いたとき、タイルに滴り落ちた鮮血。「その血の赤さは、さながら一輪の花である」(「現代百人一首」)。
寺山が生きていたら、ドバイでウオッカの鼻から滴った血も、やはり美しい一輪の花と見たかもしれない。ともかく、「ウオッカの季節」は滴り落ちた血の花に送られて終わった。ほんとうはジャパンカップの勝利のあと、鼻先ににじんだ血を見たとき、われわれはウオッカの季節の終わりに気づくべきだったのだ。
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photograph by Hideharu Suga