把瑠都の相撲が急激に良い方向に変貌しつつある。角界のディカプリオの異名を持つ把瑠都が初土俵を踏んだのは、5年前の夏場所だ。その巨体(197cm、184kg)と怪力を活かした豪快な取り口は、相撲の常道を覆す規格外のものだった。普通では全く届かない体勢からでもまわしを取れる長いリーチと懐の深さ。柔道で養った攻撃的な姿勢と抜群のバランス感覚。把瑠都はいとも簡単に100kgを越える力士たちをクレーンのごとく吊り上げ、子供を振り回すかのように豪快に投げ飛ばした。
上位陣との対戦で気づいた基本の大切さ。
出世はとんとん拍子で、新十両昇進は所要8場所。しかし、ここで思わぬアクシデントが発生する。急性虫垂炎で幕下に陥落、その手術時に施された全身麻酔の後遺症にも苦しんだ。しかし、驚異の快復力で十両に復帰した把瑠都は、ここで北の富士以来43年ぶり4人目の十両全勝優勝を果たし、わずか2年で新入幕。幕内下位でもその勢いは続いたが、幕内上位に荒削りな相撲は通じなかった。脇の甘さや腰高、スピード不足という弱点を執拗に攻められた把瑠都は、相手の圧力と動きに翻弄され、何度も左膝を負傷した。「このままでは通じない」。把瑠都はこの時初めて相撲の基本・定石が必要不可欠であることを身に沁みて感じただろう。
特製トートバッグ付き!
「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています
photograph by JMPA