- #1
- #2
Number ExBACK NUMBER
大学生3人を殺害したヒグマ「毛は逆立ち、よだれが糸を引いていた」事件の生存者(87歳)が直前に感じた“異変”「我々を待っていたように見えた」
posted2026/10/28 11:03
エゾヒグマ(画像はイメージです)
text by

伊藤秀倫Hidenori Ito
photograph by
JIJI PRESS
2025年、日本におけるクマによる人身事故の被害者は238人、そのうち13人が死亡した。いずれも統計開始以来、最悪の数字である。なぜ、クマは人間の生活圏に侵入し始めたのか? 実際に起きた襲撃事故について、ハンターや遺族、研究者など関係者の証言を集め検証した『羆を撃つ』(著:伊藤秀倫、文藝春秋)より、3名が死亡し、当時大きな話題を集めた「福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件」の章を抜粋して紹介する。《全2回の後編/前編も公開中》
◆◆◆
吉田たちの前に現れたヒグマは「それほど大きくなかった」(吉田)。
だがそのヒグマは、ちょっと様子がおかしかった。
ADVERTISEMENT
「不気味だったのは、まるで我々を“待っていた”ように見えたことです。シュンベツ岳の頂上で、いつも登山者が飲んだり食べたりして休憩することを知っていたんだと思います。そこにいけば人間が捨てた食べかすなどにありつける、と」
ヒグマは、まっすぐ近づいてきたという。
「人間を怖がる様子もない。それまで山でヒグマを怖いと思ったことは、ありませんでしたが、一方で小さい頃よく大人から“ヒグマは怖いもんだ”と聞かされてもいた。それで、慌ててキスリング(登山用リュック)を担いで、頂上から降りたんです」
クマはしばらく頂上付近でウロウロしていたが、やがて匂いの元を辿るように吉田たちの後を追って下り始めた。
毛は逆立ち、よだれが糸を引いていた
「追っかけてくるというよりは、犬が興味をもって人についてくるような感じでした。たまたま私は列の最後尾になっちゃったんで、着実に距離を縮めてくるクマの姿が見える。こっちは重いキスリングを背負って、スピードはあがらない。思わず『おい、前、もっと急いでくれ! クマが来てる』と叫びました」
気付けば、クマは10メートル後方にまで迫っていた。
