ベテランの証明BACK NUMBER
《車いすテニス生涯グランドスラム》上地結衣32歳が語る“終わらない探求”とは?「どうなるかわからなくても、いったんやってみる」
posted2026/10/22 11:01
32歳にして生涯グランドスラムを達成した上地。4大大会のシングルス通算勝利は12を数える
text by

石井宏美Hiromi Ishii
photograph by
Asami Enomoto
幾多の壁を乗り越えて、地位も名声も手にしたアスリートがなおも挑み続ける理由とは──。上地結衣は、だから今日もコートを駆ける。
生涯ゴールデンスラムという、4大大会とパラリンピックをすべて制した者だけが手にできる称号。車いすテニスの日本女子で初めてその頂点に立ちながらも、上地結衣に慢心はない。むしろ、答えのない課題に向き合い続ける探求者としての姿がある。
「世界ランキング(2位/10月15日現在)という指標はありますが、これまで培ってきた技術やできるようになったことを見れば、過去のどの時点よりも今が一番強いと思っています。でも、もっとやりたいことがあるし、得られた感覚によって変化していくものもある。今が一番と言い切って成長を止めたくはないんです」
穏やかな微笑みの奥には、勝負師としての静かな自負が宿る。32歳。ベテランと呼ばれる年齢になっても、彼女はなおキャリアのピークを塗り替え続けている。
ウィンブルドンへの決意
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ウィンブルドンを取らずにはテニスを終われないという強い思いが確かな確信へと変わったのは、昨年の決勝で敗れた瞬間だ。芝のコートでは車いすの車輪が重く進み、ボールの跳ね方も読みにくい。精密なコントロールを武器とする上地にとって、芝は「得られる情報が最も少なく、プレーのイメージを組み立てにくい」場所だった。
今年、彼女が聖地の芝で選んだ戦い方は、ある意味、自分のスタイルを封じる決断だった。本来、上地は多彩なショットと細やかな駆け引きで相手を揺さぶるが、勝つために、それらをいったん手放した。

