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「このままズルズル普通の選手になるのかな」“消えかけた天才”東農大・前田和摩が箱根予選会で見せた新しい姿「彼は日本最高のランナーですから!」
text by

杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byKeiji Ishikawa
posted2026/10/18 17:02
箱根駅伝予選会、終盤まで日本人トップを争う走りを見せて出場権獲得に貢献した前田。ラストイヤーに箱根路で真の力を見せられるか
「だいぶ悔しさは残ります。負けたこともあるし、最後まで粘り切れなかったので。だけど、これが現時点の状態。自分の現状を受け入れるしかない。前を向いて、取り組んでいきます」
広い昭和記念公園をぐるりと見渡すと、さまざまな思い出がよみがえる。留学生たちと互角以上に渡り合い、堂々の日本人トップに輝いて衝撃を与えたのが1年目。2年目は肺気胸の影響が長引き、無念の欠場でチームも予選会敗退。3年目は本戦の出場権確保に貢献したものの、小さな故障に悩まされて日本人6番手で無難にまとめた。過去の立川を思い返すと、肩をすくめた。
「思い描いた大学生活を過ごせたかといえば、そうではないですね。ネガティブになったこともありました。このままズルズルと微妙な成績を残したまま卒業し、実業団でもケガをしながら最低限で走って、普通の選手になっていくのかなって」
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それでも、前向きになれた。今年度は例年以上に走り込め、強度の高いポイント練習の回数も増えている。故障と復帰を繰り返していた昨年度とは明らかに違う。5月に全日本大学駅伝の関東選考会で10000mのレースを走ったあと、継続して練習を積んでいるという。
「以前は練習をすれば、ケガに気を遣ってゆっくり過ごさないといけない状況でしたが、最近はケアさえしっかりすれば、すぐに次の練習ができます。今年は走ること自体が楽しめているんです。故障がないことは、自信にもつながっています」
いまは新しい前田和摩
過去の栄光を振り返り、思い悩むこともない。日本選手権の10000mで日本人学生記録の27分21秒52をマークしたのは2024年5月。あれから2年5カ月が経過し、気持ちを新たにしている。周囲からは当時といまを比較されることもあるが、はっきり言い切る。
「いまは新しい前田和摩。いろいろケガが重なり大変でしたが、『0』から『1』になり、またさらに上げている最中です。できれば、あの頃と比べすぎないでもらえると、うれしいです」
昔のようにがむしゃらに突き進むことはない。頭を巡らせて行動し、いま必要な選択をしている。俯瞰して考えられるようになった。苦労した時間も無駄ではなかったという。最後の箱根駅伝に向けて、モチベーションは高い。

