プロ野球PRESSBACK NUMBER
「ここがパパの職場だよ」急逝したロッテ右腕へ...唐川侑己が引退試合で贈ったサプライズ「マウンドの姿が主人と重なって」一周忌前夜の同期秘話
text by

梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara
photograph byJIJI PRESS
posted2026/10/10 11:11
ドラフト同期だった唐川と伊藤義弘さん
まだ独身だった時に、伊藤家に何度も遊びにいった。振る舞われたモツ鍋が美味しかったのは今でも鮮明に覚えている。理想とする家族のイメージは、伊藤家そのものだった、と。
「伊藤さんの家に招待してもらって、モツ鍋を食べさせてもらったりした。よく話をしたし、よく一緒にいた。お兄さんみたいな感じ」
シーズンオフだったため、葬儀のために福岡まで急きょ飛び、出席した。4人の子どもたちと、久々に再会した夫人の悲しむ姿を目にして涙がこぼれた。その時からずっと、大好きな伊藤先輩の家族に、何かしてあげられることはないかと自問自答する日々が続いていた。公式戦に招待して「ここのマウンドでパパは投げていたのだよ」と伝えようと考えたこともあった。でも、何か違うのではないかと思いとどまった。そして引退の時を迎えた。
「パパのことを思ってくれたら」
ADVERTISEMENT
「お葬式にいって、家族の姿を見て、自分に出来ることはないかなあと考えていた。こうやって自分が引退するタイミングで、家族に負担をかけるけど、来てもらって自分の姿をみてもらいたいと思った。あの年のドラフトで入団した選手たちのなかで現役はボクがラスト。最後にボクのピッチングを見てパパのことを思ってくれたらと思った」
そこから引退試合に伊藤家を招待する計画が動き出した。
しかし、なかなか伊藤家に連絡が出来ない唐川がいた。
「連絡する時は勇気が必要だった。もしかしたら嫌だったらどうしようとか。ありがた迷惑かもしれないとか。色々と考えてしまった。でも、連絡するとすごく喜んでくれて、わざわざ福岡から必ず駆けつけてくれるといってくれた」
セレモニー映像の“サプライズ”
だから、試合後のセレモニーでビジョンに流れる現役時代の軌跡を振り返る映像には2007年12月17日に千葉市内で行われた入団会見の映像を必ず入れてほしいと球団に要望した。その映像には、自分の姿だけでなく伊藤の姿もある。高校生が3人。大学社会人から4人。テーブルの上に笑顔で手を並べている。一瞬かもしれないが、それが夫人と残された4人の子どもたちのために用意したサプライズだった。そして航空券と宿泊ホテル、観戦チケットを唐川自ら手配するなど迎える準備を整えていった。


