ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
プロ5戦目の23歳が“衝撃のカウンター”で世界王者に…吉良大弥は日本ボクシング新時代の象徴か? レジェンド井岡一翔が託した「時代を作ってほしい」
text by

渋谷淳Jun Shibuya
photograph byHiroaki Finito Yamaguchi
posted2026/09/03 17:20
難敵カニサレスを圧倒し、プロ5戦目で世界王者となった吉良大弥(23歳)。志成ジムの先輩・井岡一翔は「時代を作っていく選手」と称えた
「ここからが勝負」完璧なカウンターが決まるまで
「序盤はいけると思った」との感触を得た吉良は、中盤に入るころ「ただちょっと怖かったので判定狙いでもいいかな」とも考えていた。カニサレスはかつてこのクラスで2度世界王者となり、2024年1月には寺地拳四朗(BMB)とダウン応酬の激闘の末に惜敗している実力者だ。歴戦の強者は新鋭の心にできた一瞬のスキを見逃さなかった。
6回、カニサレスがググッとピッチを上げて吉良に迫る。それまで鋭いバックステップで相手のパンチをかわしていた吉良が、ブロックの上からパンチを受けるようになる。防ぎ損ねて顔面やボディに被弾するシーンも出てきた。カニサレスはここが後半戦に向けての勝負所だと読んだのだ。そして、まったく同じ思いを抱いていたのがリングサイドにいた井岡だった。
「大弥は完全にペースを取って、自分の流れになっていたけど、ペース争いやポイントはあそこからが勝負。自分との戦いになってくる時間帯だった」
ADVERTISEMENT
井岡から「ここからが勝負やぞ」と鼓舞された吉良にもそのことはよく分かっていた。
「(カニサレスは)6ラウンドのタイミングで出てくるだろうと思って、そうしたら実際に出てきた。6ラウンドが終わったとき、ここからが勝負っぽいなと。下がってしまうと相手がやりやすいので、詰めてきたところを詰め返そうと思いました」
12ラウンドの経験がない吉良は、この時点で疲労はなかったものの、「あと半分あるのか」という気持ちになり、未知数である終盤のスタミナに一抹の不安があった。やはりここが踏ん張りどころだ。7回、吉良はカニサレスの圧力を跳ね返し、そして距離が近づいた瞬間、カニサレスの左フックに合わせてシャープな左フックを振り抜く。これがドンピシャのカウンターとなってヒットすると、前がかりだったカニサレスが背中からキャンバスに落下。ダメージは甚大で、レフェリーがカウント途中でストップを宣告した。目の覚めるような鮮やかなノックアウトだった。
同じ大阪出身で、東京農大の先輩(ともに中退)でもある井岡に声をかけられてプロ入りした。以来、大先輩の背中を追い続けて世界初挑戦にこぎつけた。プロ5戦目での戴冠は田中恒成に並ぶ国内最速タイ記録であり、当時の新記録を打ち立てた井岡の7戦目を上回った。


