Number ExBACK NUMBER
「最初はどこか勘違いしていた」“高校駅伝の超名門”が「女子短距離で日本一」の衝撃…監督が明かす“失敗からの軌跡”「結果だけを求める想いが…」
text by

別府響Hibiki Beppu
photograph by佐久長聖高校陸上部提供
posted2026/09/08 11:01
今夏のインターハイで女子トラック種目の総合優勝に輝いた佐久長聖高校陸上部女子。一方で、全国的な強豪になるまでには様々な紆余曲折もあった
「本来なら競技を頑張る活力の源って、自分の中にあるはずなんです。高校の部活動ですから、別に大会があろうがなかろうが、いろんな面で自分の成長のためにやるのが一番いい。
特に陸上競技は自己ベストという、競技レベルの高低に関わらず狙える目標が身近にあるはずなんです。にもかかわらず、今までと同じような熱量で競技に取り組めなくなってしまった選手を見たときに、これまでの自分の考え方や生徒への接し方は変えなきゃいけないな……と思いました」
指導者として“正しい”メニューを与えるだけで良いのか。ただただタイムを追い求めるだけの練習になってしまっていないか。そんなことを考え始めた。
競技への熱量を維持するために…重要なことは?
ADVERTISEMENT
自問自答しながら生徒たちと接するなかで早川が特に感じはじめたのは、細々とした練習内容よりも、むしろトラックの外側での日常生活の大切さだった。
「コロナの時は顕著でしたが、そうでなくても競技って結果にしても調子にしても、どうしても浮き沈みがある。そういう中で選手としてモチベーションを絶やさないためには、日常の安定感がすごく大事なんですよね」
それは日々の挨拶や、落ちているゴミを拾えるかどうかといった、一見競技とは関係のなさそうな部分でこそ感じたという。
「例えばゴミ拾いをすれば、その姿を見て応援してくれる人がいるかもしれない。挨拶をきちんとすれば、それがきっかけで周りの人とのコミュニケーションが広がるかもしれない。
そういう中で人とのつながりができるし、レース前に応援してくれる人の顔を思い描ける。そういう理由があれば人は頑張る力が湧くし、苦しい時でもモチベーションを保つこともできる。もちろんゴミ拾いや挨拶をしたからって足が速くなるわけではないけれど、結果的にそれが競技力にも繋がるんだなと」
それまでも生活面の指導ももちろんやってはいた。ただ、この頃からはより意識するようになったという。今夏のインターハイ400mで6位に入賞し、8月の日韓中ジュニア交流競技会の同種目でも優勝した3年生の鎌倉梨々華は、早川のこんな言葉を記憶しているという。
「先生から『落ちているゴミにすら気づけなくて、自分の走りの課題に気づけるのか?』と言われたのがすごく印象に残っていて。400mってコーナーもあるので、レーンを踏んだら失格なんですよね。そういう細かい部分に日常から気づけるか。気づこうとしているか。そこまで考えることで、実際にスタートラインに立った時の自信にもつながったような気がします」

