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1,846万再生のバズ動画はどう生まれた? 今注目の3人のスポーツ・インフルエンサーが語る、ファンを動かす企画と伝え方

posted2026/08/20 11:00

 
1,846万再生のバズ動画はどう生まれた? 今注目の3人のスポーツ・インフルエンサーが語る、ファンを動かす企画と伝え方<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

企業のマーケティング担当者が多く集った「Number Sports Marketing Summit 2026」

text by

福田剛

福田剛Tsuyoshi Fukuda

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Yuki Suenaga

7月23日、東京・アンダーズ東京で開催された「Number Sports Marketing Summit 2026」。スポーツを取り巻く環境が大きく変わるなか、企業やブランドの発信のあり方も新たな局面を迎えている。数あるセッションのなかから、「スポーツの界隈マーケティングが企業で成功する法則」をレポート。スポーツマーケティングに精通した株式会社サニーサイドアップの清水裕太郎をファシリテーターに、第一線で活動するスポーツ・インフルエンサーたちがその実体験を語った。

注目を集める、界隈マーケティング

 セッションの冒頭、株式会社サニーサイドアップでスポーツプロモーションを担当する清水裕太郎は、「2026年はスポーツに関わるメディアのあり方が大きく変わる契機になった年」と切り出した。

「今年は野球、サッカーの世界大会が開催され、大いに盛り上がりました。その一方で、これまでテレビを中心に生中継で見られていた試合は、サブスクリプションサービスでの視聴が中心となり、視聴スタイルもスマホへと変わりました。また、メディアやSNSが多様化していく中でスポーツ×企業のコミュニケーションのあり方も、より細分化していくことは間違いありません。企業としてより大きなインパクトを残すためには競技や媒体ジャンルごとの『界隈マーケティング』の重要性がますます高まっています」

 界隈マーケティングとは、共通の価値観や趣味、関心を持つSNS上のコミュニティを起点にアプローチする手法。企業やブランドが主役になるのではなく、界隈やインフルエンサーによる訴求によって共感を生み、ユーザーの自発的な情報拡散や購買につなげていく。そんなスポーツのコミュニケーションを実践している存在として登壇したのが、3人のインフルエンサーだ。

クリエイターごとに異なる、スポーツに対してのスタイル

 2年前までプロラグビー選手としてプレーしていたTAISEIは、現在は地元・青森でラグビーの普及活動をしながら、クリエイターとしても活動している。

「僕はライフスタイルを軸に発信しています。『TAISEIさんのような人になりたい』と思ってもらえるような、でも行き過ぎたギラギラ感ではなくて、『自分でも少し頑張ればこうなれるかもしれない』と思ってもらえる距離感を意識しています」

 そのため、扱う案件についても「スポーツはもちろんのこと、スキンケアだったり、シェーバーだったり、自分を変えることができるような身近な商品の仕事を受けることが多いですね」と話した。

 サニーサイドアップでスポーツ関連のPR・インフルエンサーマーケティングを担当しながら、自身もランニングインフルエンサーとして活動する藤村美杏は、ブランドとの関係性の築き方を語った。

「2年ほど前から、当時まだ日本ではあまり馴染みのなかった海外スポーツシューズブランドと個人として専属契約をさせていただき、本当に一緒に成長してきた感覚です。私から様々な施策やコンテンツの提案をすることもあれば、ブランド側から『こういう投稿を増やすと、さらにエンゲージメントが高まりそう』といった第三者視点の意見や、各コンテンツのフィードバックをいただくこともあります。企業と一緒にコミュニケーションを作っている感覚が増えている実感があります」

 こうしたやり取りを重ねることで、「ブランドへの愛も深まり、本当に愛を込めてプロダクトを発信できる」と話した。藤村にとっては、単発のコラボレーションよりも、ブランドと深く関わりながら発信する方がしっくりくるのだという。

 一方、「クリスのバスケ日記」としてTikTokを中心に、YouTube、Instagramなどで発信を続けるクリスは、あえて専属契約ではなく、複数のブランドとコラボレーションしてきた。

「元々スポーツショップで働いていたので、いろんなブランドが並んでいるのが当たり前だったんです。来たお客さんが選ぶ。だから自分自身を、ある意味“商品棚”みたいな存在だと思っています。そのため自分が悪いと思ったところは悪いと伝えることもあります。誰にでも合うとは言わない。その代わり、『こういう人には絶対に合う』と責任を持って伝えるのが僕のスタイルです」

アスリートではないからこそ…

 スポーツブランドは現役アスリートと専属契約を結び、マーケティングに活用している。一方で、インフルエンサーやクリエイターを使ったプロモーションを行うのはなぜか。登壇者たちは、それぞれの立場から答えた。

 TAISEIは、競技者とは違う動き方ができる点を挙げる。

「現役の選手はリーグが12月から始まって5月、6月まであるので、その間は稼働がなかなかできません。その中で、僕のような元プロ選手がラグビー普及活動をしたり、自分のSNSを使ってラグビーを広める活動ができるというのは企業やチーム以外からしても大きいと思います」

 藤村は、ユーザーと同じ目線に立てる“等身大”の価値を語った。

「アスリートは憧れではあるものの、競技者としては遠い存在です。ジブンゴト化するには遠いと思うケースもあるんだと思います。そこを私はユーザーと同じ、一会社員で、週末走るくらいのポジションにいます。だからこそ、こういうシューズがいいとか、ユーザーが自分ごととして受け取ることができる。これはアスリートではなくクリエイターだからできることだと感じています。最近ではアスリートとのコラボレーションも増えてきました」

 クリスが挙げたのは、ファン目線での共感性だった。

「前提として、僕自身が一人のファンなんです。だからこそ、こんな面白い試合があったとか、このプレーがすごいよねとか、ファンと一緒に楽しめる動画を作ることができる。これまでもコラボレーション企画として、試合を見に行こうとか、日本人選手を応援するためにアメリカに行こうという企画動画も作っていますが、この行動もファン目線での動きですよね。これはアスリートではなかなかできないですよね」

反響を生むのは、企画と伝え方

 これまで数多くの発信を行ってきた3人が、反響をどう生み、どう広げてきたのかも共有された。

 TAISEIは、「発信のハードルが下がった時代だからこそ、表現の工夫がより重要になっている」と話す。

「iPhoneでもかなりいい画が撮れちゃうぐらい、機材さえあれば誰でもクリエイターになれる時代だと思います」

 そのうえで、自身も発信の質を上げるために試行錯誤を続けているという。

「最近はより自分しかできないことをやりたくて。一眼レフを購入して、編集も勉強しながら、どうやったらより魅力的に商品を訴求できるか、視聴者に楽しんでもらえるかを研究しています」

 クリスは、反響が大きかった案件としてJリーグのクラブとのコラボレーションを挙げた。

「NBAが好きな人は、他のスポーツにも興味関心が高いんです。だから、サッカーだったり、バドミントンだったり、『こういうチームがあるんだよ』『こういう大会があるんだよ』というように、バスケットボール以外のスポーツでも、初めて触れるファン目線で魅力を伝えることで共感が生まれ、実際に『行ってみよう』というアクションにつながっています」

 藤村は、数字として大きな結果が出た事例として、1,846万回以上再生されたエナジードリンクメーカーとのコラボレーション動画を紹介した。

「エナジードリンクメーカーさんが主催するイベントの動画なのですが、実は昨年も同じイベントに参加した動画が560万回以上再生されていて、すごく反響が大きかったんです。そこで動画の構成や内容自体はあえて変更せず、最新のトレンドを取り入れた撮影方法や音源選びと、より臨場感のある演出にチューニングしたことが功を奏して、1,846万回という再生数につながりました。私のInstagramのフォロワー数は16万人ですが、しっかり考えたコンテンツであれば、これだけバズを創ることができると証明できました」

発信力のある個人と組む相乗効果

 セッションでは、企業や競技団体の発信そのものが変わってきていることも話題になった。清水は「単にSNSを更新するだけでなく、企画性を持たせ、継続的に見られるコンテンツへ育てていく流れが強まっている」と話す。

「NPBの球団が縦型のショートドラマを自分たちで作っていたり、スポーツを中継する配信チャンネル自体が、自ら企画してコンテンツをSNSにアップするなど、いろいろな企画がバズっています」

 その流れのなかで紹介されたのが、五十嵐亮太のYouTubeチャンネルだ。

 五十嵐はサニーサイドアップ所属で、清水がマネジメントを担当。実は、以前からYouTubeチャンネルの開設を勧めていたものの、本人含めて後発的なスタートなことに消極的だったという。

 一方、同じ時期に旅行ジャンルで国内業界最大手のJTBがMLBの公式パートナーとなり、自社での情報発信を強化したいという課題を抱えていた。とはいえ、企業単独でYouTubeやSNSを運用しても、フォロワーを増やし、継続的にコンテンツを作っていくのは簡単ではない。そこで立ち上がったのが、MLBでもプレーした五十嵐の発信力とJTBの企画を掛け合わせる形だった。

「企業とクリエイターである五十嵐が一緒に作り上げたこのチャンネルは、今では登録者数は12万人を超えています。ドジャース観戦ツアーの動画だけでも40万回再生を記録しました。企業が単独で語るのではなく、発信力のある個人と継続的に組むことで、コンテンツを届ける。そんな発信のあり方は、今後さらに広がっていくのではないでしょうか」

今後のスポーツ発信はどう変わるのか

 セッション終盤では、これからのスポーツ発信のあり方についても、それぞれの考えが語られた。

 藤村は、「発信力を持つもの同士が協力し合い、スポーツの魅力を届けていく流れが強まる」と見ている。

「影響力のあるメディアやインフルエンサー、企業がタッグを組んで、世の中に届けていくことがどんどん増えていくと思っています。私も自分のコンテンツを伸ばすのはもちろんですけど、メディアと一緒にタッグを組んで、スポーツの魅力を伝えていきたいです」

 TAISEIは、自身の活動の根底にある思いとして、ラグビー界への還元を挙げた。

「ずっとラグビーしかしてこなかったので、ラグビーの業界にお返しをしたいという気持ちがあります。来年は世界大会も行われますので、いろいろな企業さんと一緒に盛り上げられたらと思います」

 一方、クリスは、今後のスポーツ発信では「規制が少しずつ緩やかになり、より多くの人が発信の担い手になっていく」と語る。その例として挙げたのがBリーグだ。

「Bリーグは試合中の動画撮影は15秒以内であればOKという方針を打ち出しています。動画投稿を一定の範囲で認めることで、インフルエンサーに限らず、一般のファンもまた“小さな発信者”になり、拡散してくれます。それがBリーグ人気の広がりに貢献していることは間違いありません。それくらいSNSの影響力は無視できないですし、マーケティングとして考えたときにすごく大きなメリットがあります。今後この流れは他のスポーツにも広がっていくはずです」

 アスリート、クリエイター、企業、メディア――分かれていた役割が重なり始めている今、求められているのは、一方通行の発信ではなく、"界隈"の熱量の中に入り込み、ともに育てていく視点だ。サニーサイドアップは、今後もよりスポーツ界隈マーケティングに力を入れていく方針だという。

 スポーツマーケティング新時代に向け、競技とファン、そして企業をつなぐ新たな潮流が動き始めている。

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