オリンピックへの道BACK NUMBER
号泣する木原龍一に「泣かないで」笑顔の三浦璃来と何度も見つめ合い…「お互いがお互いのために…」引退会見で最後まで見えた、りくりゅうらしさ
posted2026/04/29 17:02
引退会見冒頭、号泣する木原龍一に笑顔で声をかける三浦璃来
text by

松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Asami Enomoto
4月28日、フィギュアスケート・ペアの三浦璃来と木原龍一が引退記者会見に臨んだ。
2人が引退を発表したのは4月17日のこと。それから10日あまり、三浦は白いジャケット、木原はグレーのスーツで登壇する。
号泣する木原に「泣かないで」
花束を受けとった2人が着席すると、まず三浦がマイクを握る。笑顔で挨拶を始めるやいなや、木原が涙した。
ADVERTISEMENT
「泣かないで」
三浦が優しく言葉をかける。でも、木原の涙は止まらない。のちにその場面について、木原はこう語っている。
「泣くことはないかなと思ったんですけど。裏でいろんな方に見送っていただいたときにスイッチが入って。(三浦に)『今、泣くの早いでしょ。口を開けなさい』と言われました。控え室にいるときから思い出して、気持ちは来てましたね」
去来する思いは絶えなかっただろう。会見もまた、2人の歩みが凝縮された1時間だった。
「もうこの試合が最後って…」五輪で流した涙
引退を考え始めた時期は、およそ1年前だったという。木原が語る。
「これが最後の世界選手権なのかもなっていう思いが2人とも出てきまして。来シーズンが最後になるかもねっていうのを常に話し合いをしてきて、少しずつ話が出始めたのは、去年の世界選手権で2度目の優勝をすることができたときですね」
だから、フリーの選定にもこだわった。三浦が明かす。
「フリープログラムの振り付けに入ったときに、初めは違う曲で振り付けが始まっていたんですけど、最後のシーズンになると2人は分かっていたので、どうしても滑りたかった『グラディエーター』で滑りたいと振付師のマリー(マリーフランス・デュブレイユ)先生にお話をして。『じゃあ分かった、あなたたちが滑りたいグラディエーターで』と振り付けをしてくださって」
最後の1年と捉え、進んできた。「最後だ」という思いがあったから、流す涙の意味も特別なものがあった。
「オリンピック期間中はずっと最後は僕が泣いていたんですけど、その思いの中にはもうこの試合が最後っていうのは分かっていたので、それも涙の原因だったんですよね」(木原)
懸ける思いが強かった。三浦も言う。
「この1年はオリンピックに向けた体作りであったり、そういったものは徹底してやっていたので。だからこそショートプログラムの失敗では、これだけやってきたのに、スカートが滑ってしまってリフトが3点ぐらいしか取れなくて……。この積み重ねは何だったんだろうといった涙でした」
引退を決めてからの思い、オリンピックでの思い。それらとともに2人が伝えたのは、2人で歩んだ時間の尊さだった。


