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「身体が全快しないんです」“超過密日程”の永瀬拓矢は、なぜ10歳下の藤井聡太“不調説”を否定したか「基本的に調子とかはないんですよね」
text by

大川慎太郎Shintaro Okawa
photograph by日本将棋連盟
posted2026/03/25 11:04
王将戦第6局の結果を受けて、3勝3敗となった藤井聡太王将と永瀬拓矢九段
「あまり過密日程が続くと身体が全快しないんです。100%出せていたものが90%になって、次に80%になっていく感じです。対局が終わればそのたびに回復はしているんですけど、全快しないような状態がずっと続いている。ベストは尽くせていますけど、ベストの容量が変わってくるんですよね」
藤井さんも疲れはあるかもしれませんが、調子とかは
永瀬より10歳若い藤井だって疲労はあるだろう。さらに言えば棋王戦とのダブルタイトル戦なので、準備も簡単ではない。藤井は王将戦第5局、棋王戦第4局、王将戦第6局と剣が峰の3局をしのぎ、いずれもフルセットに持ち込んだ。最強棋士の底力を改めて見せつけられた思いだ。
「永瀬さんからすると、やっぱり藤井さんはしぶといという感じですか?」
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シリーズ中は藤井についての質問は避けるつもりだったが、つい口にしてしまった。すると永瀬は何を言っているんだとでもいうように話し始めた。
「それはもちろんそうなんじゃないですか。将棋の内容もこれまでと変わっていないですし。いや、これについてお伝えするのはすごく難しいんですよ。藤井さんも疲れはあるかもしれませんが、基本的に調子とかはないんですよね」
調子はない? 内容もこれまでとは変わっていない?
一部で囁かれている藤井の不調説を否定するような発言だった。藤井の状態をもっともよくわかっているのは本人と、一番濃く接している対局者で間違いない。そうなると永瀬の言葉は誰よりも重くなってくる。
「対局者はそう思ってるんですけど、やっぱり将棋は内容がとても難しいので、きちんと伝えようと思うと本当に難しいんです。だから解説者に頑張ってもらいたいんですけど、現状は簡単ではありません。だから藤井さんと私がやっていることが、ブラックボックスになりつつあるんです。誰も中身がわからない。本当はブラックボックスなんかじゃないんですけどね」
私がきちんと説明しようとすればできるんですけど
そうであるなら、真の意味で正しく説明できるのは対局者だけということになる。だから私はこうして永瀬に話を聞いているのだが、対局者は言うまでもなく指すことが仕事で、説明は義務ではない。厚意なのだ。
改めて将棋は、棋士とメディアの距離が近いと思う。

