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“奇跡のJ2残留”カターレ富山社長も「信じられなかった」名将・大木武の“決断”…J3降格ロアッソ熊本GMの後悔「富山の試合ですか? 今も見ていません」
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宇都宮徹壱Tetsuichi Utsunomiya
photograph byKATALLER TOYAMA
posted2026/01/23 11:07
昨季のJ2最終節で奇跡の残留を果たしたカターレ富山。殊勲のゴールをあげたのは18歳(当時)の高卒ルーキー・亀田歩夢だった
「言いたいことがあっても、あえて言わない。シナリオが頭の中で描けていても、それを決して口に出さない。監督やフロントに『このサッカーでいいんですか?』とか『勝ち点が積み上がっていないじゃないか』なんて言われても、社長が口出しすれば、変なプレッシャーになりかねないですからね。その意味では、これまで以上に忍耐力が試されるシーズンでした」
富山は監督交代があったものの、左伴にしても織田にしても、指揮官を信じるというスタンスでは完全に一致していた。ただ、同じ「信じる」であっても、前者には確信があったのに対し、後者にはどこか願望のようなものがあったことは否めない。その上で左伴に、残留できるクラブとできないクラブの違いについて、あえて問うてみた。
「結局のところ『できる・できない』ではなく、『やる・やらない』の局面で『やる』を選択したクラブが残留するんだと思います。気持ちの上でも、サッカーの内容でも、仕事の仕方でも。その局面で中途半端なまま、逃げの姿勢になったクラブは、だいたい降格しています。私自身、最終節で残留を決めたシーズンは4回目ですけど、いずれも『やる』を選択していましたね」
明暗を分けた両者の間にある“リスペクト”
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この言葉、織田はどう受け止めるだろうか。余談ながら左伴は、GMとしての織田の仕事を大いにリスペクトしている。会社の都合でサンフレッチェ広島の社長になっていた織田が、熊本のGMに就任したときには「やっぱりオリさんは現場で仕事をしないと!」と、わがことのように喜んだという。そのことを伝えると、当人は少し照れた表情を浮かべた。
「嬉しいですね。来季はJ3に落ちますが、やるべきことは変わりません。新卒で入ってくる5人の若手を含め、選手たちが成長していく姿を見るのは本当に楽しみです。左伴さんは70歳を過ぎてもバイタリティ溢れる仕事をされていますが、私も『お前はいらない』と言われるまでは、大好きな現場の仕事を続けていきたいと思っています」
両者の明暗を分けたのは、わずか「1」の得失点差。織田は任せることで、左伴は待ち続けることで、それぞれ指揮官を信じ続けた。どちらが正しく、どちらが間違っているという話ではない。ほんのわずかな誤差で両者の立場が入れ替わり、結果と評価が正反対になっていた可能性もまた、十分にあり得ただろう。
2025年11月29日のJ2最終節。それは、フットボールが持つ深淵と不条理を痛感する、まさに記憶に残る一日であった。

