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「正直悔しいですよ」井上尚弥陣営が心配していた敗者ピカソ“判定ならOK”の姿勢…現地記者が聞いた「(中谷戦の件は)申し訳ない…」試合直後に井上尚弥が語った本音 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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posted2025/12/29 17:31

「正直悔しいですよ」井上尚弥陣営が心配していた敗者ピカソ“判定ならOK”の姿勢…現地記者が聞いた「(中谷戦の件は)申し訳ない…」試合直後に井上尚弥が語った本音<Number Web> photograph by Naoki Fukuda

12月27日、井上尚弥vsアラン・ピカソ。サウジアラビア現地記者が見たウラ側

 エルナンデスのアタックを何とかしのいでゴールテープを切った中谷は3-0判定勝ちを収めた。スコアは1人が118-110と差をつけたものの、2人が115-113という接戦。薄氷の勝利という印象すら与える内容に終わった。

 試合後、サングラス姿で傷を隠して記者会見に現れた中谷は「すごくタフな試合だった」と繰り返し、「階級の壁を感じたか」という質問には次のように答えた。

「バンタム級だったら倒していたタイミングがいくつかあったと思いますけど、相手の耐久力も感じながら戦っていたので、そこらへん(階級の壁にぶつかったと)を思われるのは仕方ないと思う。でも戦い方によって全然対応できると思う。これからこの試合を糧にスーパーバンタム級にアジャストする思いを持っている」

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 中谷は「これをいかに成長につなげるかは、燃えたぎっているものがあるので期待してもらえたらと思います」とも語った。静かな語り口はいつも通りだが、相当悔しい思いをしていると感じさせた。

なぜ井上尚弥はピカソを倒せなかったのか?

 井上尚弥は入場曲の一つ『Departure』でリングインし、大学で神経科学を専攻する異色の大学生ボクサー、アラン・ピカソ(メキシコ)と対戦した。中谷と同じように井上も好調なスタートを切ったかに見えた。序盤からガードを下げて長身のピカソを誘い、鋭いコンビネーションを見舞っていく。ただし、余裕を持ちすぎているようにも見え、ガッチリとガードを固めるピカソにダメージングブローを決めることができない。

 井上が実力差のある選手と対戦するとき、序盤で圧倒してしまうと相手が専守防衛になり、攻めれば攻めるほど悪循環を生むというパターンがある。22年12月、バンタム級4団体王座を統一したポール・バトラー(英)戦などがそうだ。

 戦前、大橋秀行会長が「ピカソは判定まで持ち込めばいいという戦いではなく、勝ちにきてほしい」と何度か口にしていたことを思い出す。終盤、井上のKOを期待してか、会場からは指笛が鳴り始めた。雑になった井上に対し、ピカソが左フックを決めるなど、いくつかのラウンドで挑戦者がポイントを奪う。結局、井上は倒すことができず、ピカソは試合終了のゴングと同時に拳を突き上げた。スコアは120-108、119-109、117-111。大差勝ちにもモンスターの表情は固いままだった。

井上尚弥の本音「正直悔しいですよ」

 リング上でのインタビューで「疲れた」と表現した井上は試合後の記者会見でも渋い表情を浮かべ、「それ(年4試合)も含め、今日の試合内容も含め、ドッと疲れたなという感想です」と話し始めた。

【次ページ】 井上尚弥の本音「正直悔しいですよ」

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