第102回箱根駅伝(2026)BACK NUMBER
総合11時間切りでも10位に入れず…近年激化する箱根駅伝のシード権争いで求められる強化策とは《高速化がもたらす学生の躍進》
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生島淳Jun Ikushima
photograph byKiichi Matsumoto
posted2025/11/19 13:00
第101回箱根駅伝10区でフィニッシュする青山学院大学の小河原陽琉(当時1年)。歴代最速の総合記録10時間41分19秒に伴い、シード権争いも激化している
直近10回の箱根駅伝において、総合10位でシード権を確保した大学のタイムを見てみよう。
2016年 帝京大学 11時間15分21秒
2017年 東海大学 11時間17分00秒
2018年 中央学院大学 11時間14分25秒
2019年 中央学院大学 11時間09分23秒
2020年 東洋大学 10時間59分11秒
2020年には、10位のタイムがついに11時間を切った。東洋大が出したこのタイムは、10年前だったら優勝も狙える記録であった。結果的にシード権確保のラインが大幅に上がったのは、多くの選手がカーボンプレートが内蔵されたシューズを履くようになり、記録が向上したことがひとつの要因として考えられる。そしてこの年以降、「11時間」をめぐる攻防が繰り広げられてきた。
2021年 東京国際大学 11時間05分49秒
2022年 法政大学 10時間58分46秒
2023年 東洋大学 10時間58分26秒
2024年 大東文化大学 11時間00分42秒
そして2025年大会でも激しいシード権争いが繰り広げられた。10区では4校が8位から11位を争う展開となり、それがフィニッシュ地点の大手町まで続いた。そして結果は……
8位 東京国際大学 10時間54分55秒
9位 東洋大学 10時間54分56秒
10位 帝京大学 10時間54分58秒
11位 順天堂大学 10時間55分05秒
8位から11位まで、わずか10秒差、10位帝京大と11位順大の差もわずか7秒にすぎなかった。
10位に入った帝京大の中野孝行監督は、レース後こう話した。
「争った4人は本当によく頑張ったと思います。ウチは1年生の小林咲冴を起用しましたが、たとえ彼が11番になっていたとしても、いい経験になるし、人生の教訓を得られたはずです。そうした価値が箱根駅伝にはあります」
その言葉どおり、箱根駅伝は選手にとって、大きな成長の機会となるのだ。
今後も続く“11時間切り”の攻防
2025年大会では13位の立教大学のタイムが10時間58分21秒で、11時間切りがシード権獲得の目安とならないことがはっきりした。2026年に開かれる第102回大会でも、このトレンドは続くと見られる。
なぜか? 毎年10月に行われる箱根駅伝予選会の1位通過校のタイムが、今回も向上しているからだ。ここ3回の1位通過校のタイムを見てみよう。
第100回箱根駅伝予選会 大東文化大学 10時間33分39秒
第101回箱根駅伝予選会 立教大学 10時間52分36秒
第102回箱根駅伝予選会 中央学院大学 10時間32分23秒
第101回大会予選会は気温が極端に上昇したため、サバイバルレースとなってタイムが遅くなった。気象条件が落ち着いた今回の予選会では、中央学大が10時間32分台を出したが、10時間32分台の大学が他に3校もあった。
順天堂大学 10時間32分35秒
山梨学院大学 10時間32分44秒
日本大学 10時間32分57秒
中央学大だけが突出していたのではなく、他の大学も同等の力を持っていた。前々回の箱根駅伝予選会よりも、今回の方が総体的にレベルが上がっていることを考えると、気象条件によってはシード権獲得ラインが10時間53分台、あるいは10時間52分台になってきても不思議はない。このタイムを出すためには総合力が必要になる。往路で流れに乗り、5区、6区での対応力も求められる。そして7区以降、競り合い、あるいは単独走になったとしても自分の走りが出来る柔軟性も必要だろう。
ただし、箱根駅伝の勝負は机上の計算だけでは決まらない。「山の神」として歴史に名を刻んだ柏原竜二氏はこう話す。
「走るのは人間ですからね。最後は気持ちが大切です」


