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「突破確率100%」のはずのCS“王手”ソフトバンクに異変…日ハム逆襲をもたらしたベテラン捕手の戦略「堅く、堅く、痛い目にあわないよう」
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喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/10/19 06:00
CSファイナルステージ、初戦でサヨナラ打を放った山川だったが、途中出場した第4戦は日ハムバッテリーの丁寧な配球の前に沈黙した
5番・栗原陵矢は、17日の第3戦で3三振。第4戦の第1打席も、中村晃の先制三塁打の直後の2死三塁で3球三振に終わっていた。
「栗原の感じが、ちょっと焦りある感じ。晃さんは四球でもなんとかなるかな。四球とかで打席が回ると、より気持ちが行き過ぎちゃうところもあるんで」と伏見は、次打者の心理も踏まえた上で、中村晃への9球中、ストレートは2球のみ。丁寧に、変化球を左右に散らして、チャンスを広げられると嫌な場面を巧みに切り抜けた。
山川穂高への戦略
もう1場面、光ったシーンがあった。
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7-2と、日本ハムがリードを広げた5回、柳町の左中間突破の三塁打で、ソフトバンクに3点目が入った。打席には4番・山川穂高。3回の一ゴロの際、中村晃が走塁中に一塁塁審と衝突。もんどりうった際に後頭部を強打。そのまま担架で運ばれると病院へ緊急搬送というアクシデントがあり、4回の守備から中村晃に代わって山川が入っていた。
山川は3戦目が4番で“4タコ”。4戦目はベンチスタートとなったが、前述したように第1戦ではサヨナラ打を放ち、昨季のCSファイナルではMVPにも輝いている。仮に、ここで一発でも許すと、日本ハムのリードはたちまち2点に縮まってしまい、ソフトバンクが勢いづくのは間違いない。
大事に、丁寧に攻めていかなければならない。
伏見の戦略を、再び聞いた。
「途中から試合に出ているから、山川のこの日の第1打席、山川自身も、あんまり準備ができていない状態だったと思ったんです。だから、山川の頭的にも『まっすぐでいったれ』っていう、開き直り系の打席になるだろうと考えたんです。北山のまっすぐって、すごくいいけど、そこの山川の思い切りのところで“合わないように”と、堅く、堅く、めっちゃ堅くいきました。普通、どこかでまっすぐ、挟もうと思うんですけどね。あそこは、これで正解だったなとは思います」

