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「85歳、炎天下で自ら指導」「HRを打った“後”を練習」王貞治“世界少年野球大会”31回目への思い「子供たちに野球をやってもらうために」
text by

喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byMasanori Kise
posted2025/09/16 11:02
31回目を迎えた世界少年野球大会で挨拶する王貞治。野球の普及に向けた思いを聞いた
ホームランを打った時の練習を
日々の野球教室は、世界11カ国・地域から参加した95選手を4組に分け、投、打、守、走のセクションを時間ごとに区切って巡回していく。
8月2日の練習時、王が熱視線を送っていた『走』セクションの試みは、実にユニークだった。一塁への駆け抜けなど、ベースランニングの練習を一通り行った後、コーチが提案したのは「ホームランを打った時の練習をしましょう」。
スイングをして、ホームラン。走りながら、ヘルメットを両手で天に突き上げたり、ガッツポーズをしたりするのも、それこそ何でもあり。喜びながらダイヤモンドを一周し、ホームで仲間たちの出迎えを受け、ハグを交わし、ハイタッチをする。打った喜びをチームメイトたちと分かち合う。それこそ、ヒーローになる醍醐味を味わってもらうのだ。
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王は、炎天下のグラウンドで、三塁ベース付近に立っていた。
子供たちが、笑顔で走ってくる。王が上げた右手に子供たちがタッチをして、本塁へと向かっていく。その「野球をやる喜び」を、子供たちに感じてもらいたい。
野球人口の減少という課題
その“草の根活動”に、王が精力的に取り組むのは、取り沙汰されている「野球人口の減少」という喫緊の課題が、大きな要因にもなっている。
運動神経のいい男の子は、こぞって「野球」をやるというのが、それこそ昭和時代であれば、半ば当たり前の風潮でもあった。しかし、今やサッカー、バスケットボール、ラグビーや卓球など「子供たちがやるスポーツを選べる時代ですよ」と王は強調する。
少子化という社会問題に加え、こうしたスポーツや趣味の多様化も大きく影響しているのだろう。日本高校野球連盟の発表によると、2025年5月末現在、高校の硬式野球部の加盟校は20年連続減少となる3768校で、2005年(平成17年)のピーク時だった4253校から20年で500近く減少。さらに部員数も11年連続減少の12万5381人と、こちらもピーク時の2014年(平成26年)の17万312人から約4万5000人減で、全国でも36道県で部員数が減少したという、衝撃的な数字がずらりと並んでいる。

