テレビに映らない大谷翔平:番記者日記BACK NUMBER
“テレビに映らない”大谷翔平「メチャクチャ寒いよ」気温15度で海にドボン…初スプラッシュヒット争奪戦も「ドジャース連敗で水泡に帰しては」
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柳原直之(スポーツニッポン)Naoyuki Yanagihara
photograph byNanae Suzuki
posted2025/07/21 17:00

大谷翔平は「スプラッシュヒット」と言われる場外ホームランを初めて叩き込んだ
マッコビー湾にカヤックが約20隻も
各メディア、特に日本メディアにとって――この3連戦での大きな注目点は、大谷による日本選手初の「スプラッシュヒット」なるかどうかだった。「スプラッシュヒット」とは、2000年開場のオラクル・パーク右翼席後方のマッコビー湾に飛び込む本塁打のことである。
試合開始15分前に右翼席に向かい、フェンスからマッコビー湾を覗いた。マッコビー湾では、カヤックに乗ったファンによるホームランボールの争奪戦も名物で、これも取材の狙いの一つだった。
メディア向けに開場する試合開始5時間前はさすがにカヤックは見かけなかったが、試合開始1時間前あたりから徐々に増え始め、15分前になると確認できる範囲でも20隻を数えた。
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試合が始まる。急いで記者席に戻ると、2打席目にその時はやってきた。0-1の3回1死三塁。右腕ウェブのカットボールを鋭く振り抜いた。打球速度106マイル(約171キロ)、飛距離410フィート(約125メートル)の完璧な当たり。誰もが見上げた。敵地のファンさえも大歓声。ぐんぐんと伸びたライナーが右翼席を越えた。気温15度と冷たい風の中「マッコビー湾」に上がった水しぶき。通算10試合目となったオラクル・パークでついに出た大谷の「スプラッシュヒット」だった。
最高の気分だけどめちゃくちゃ寒いよ
私を含めた日本メディアは反射的に、駆け足で球場を出た。マッコビー湾に向かうと、ずぶ濡れで震えながらボールをうれしそうに抱えている男性をすぐに発見。ただ、男性はすぐに地上に上がってくることはできない。私は遊歩道から大声を張り上げ、質問を矢継ぎ早に投げかけた。
計20隻のカヤックによる大谷の記念球争奪戦を制したのは、34歳のブラッドリー・レナーさん。名前と年齢の次に職業を聞くと「私はメイルマン(郵便配達員)だ」という。本塁打球を捕った際は海に飛び込んで大喜びでガッツポーズを見せていたが……。
「最高の気分だけどめちゃくちゃ寒いよ」
と震えながらのコメント。インタビュー中に着替える場面もあった。
「ここで本塁打を待つのは通算60試合目くらい。年に12回から15回くらいしか来ないから、ここに来るのはちょっと大変なんだ。でも、楽しんでやってるから来たんだよ」
ブラッドリーさんはこうも話した。