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「俺らもおじさんになったけど」男子バレー“BBQ決起集会”でポツリ…“今年30歳”石川祐希、小野寺太志、大宅真樹が思い出す12年前の夏「ある事件が…」
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田中夕子Yuko Tanaka
photograph byYuki Suenaga
posted2025/07/20 06:01
今年30歳となる石川祐希、大宅真樹、小野寺太志。ユース時代から知る同学年の3人が“12年前の夏”を振り返った
ただ、12年前の姿を少しずつ掘り起こしていけば、さまざまなシーンが蘇ってくる。
恵まれた体躯をもちながら、試合に出場し続けてもなかなかコート内での動き方がわからず、ネットの周りでラリー中にぐるぐる回る小野寺。練習でも試合でも「俺を出せ」とばかりにギラギラした熱や負けん気を隠さない大宅。バレーボールに対して真面目で誰より貪欲でありながらも、疲れがたまったり、気乗りしない時にはサボりがちな石川。
本多が特に「今でも忘れられない」と振り返ったのが、世界ユースの1次リーグ最終戦、キューバとの試合前の出来事だ。
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「ユニフォーム、間違えました」
試合会場で背番号9をつけるはずの石川が手にしていたのは、間違えて持参した背番号6のユニフォーム。登録された背番号以外のユニフォームでは試合に出ることはできないため、チームマネージャーが慌てて宿舎に戻ったが、試合開始の時間は刻一刻と迫っている。本多はウォーミングアップをする選手を見ながら「石川抜きでどう戦うか」と考えを巡らせていた。
ユニフォームが届いた、と知らせが届いたのはコートに入場する1分前。大急ぎで着替えてなんとか事なきを得たが、試合はストレート負け。1次リーグを1勝3敗と負け越した日本は下位グループでの順位決定リーグに臨むこととなった。
「なんだよ、俺は捨て駒かよ」
1次リーグまでセッターは大宅がほぼ一人で務めていたが、メダル獲得の可能性も潰えたことで、本多はより多くの経験を積ませる狙いで順位決定リーグからは石川と永露をツーセッターで起用することを決断。アンダーカテゴリーでは大型セッターの育成も課題とされていたため、身長187cmの石川と189cmの永露を抜擢したのだが、178cmとはいえセッターが本職の大宅にとってみればその起用が不服だった。
「事前合宿でも祐希と永露のツーセッターで練習していたんです。それなのに本番はいきなり僕がワンセッターの形になったので、『こんな大舞台でぶっつけ本番かよ』って思いましたね。しかも最後はまたツーセッターに戻したから『なんだよ、俺は捨て駒かよ』って。当時は僕、尖ってたんで。めっちゃムカついた記憶があります(笑)」



