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「営業や査定システムまでアドバイスを」多村仁志が古巣に“出戻り移籍”を選んだワケ「参入2年目のDeNAで常勝ホークスの経験を試したかった」 

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石塚隆

石塚隆Takashi Ishizuka

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posted2025/07/18 11:42

「営業や査定システムまでアドバイスを」多村仁志が古巣に“出戻り移籍”を選んだワケ「参入2年目のDeNAで常勝ホークスの経験を試したかった」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

ホークスの主力として定着し、残留も可能だった多村(左端)だが、古巣への帰還を選んだ理由とは……?

営業や査定システムまでアドバイスした

 ただ7年ぶりの古巣は、帰ってきたはいいが知っている選手は金城龍彦、小池正晃ぐらいで、まったく違うチームになっていた。

「新たにDeNAになって、中畑監督からはどうしてもジャイアンツに勝ちたいんだとか、若い選手を育てたいといった話をいろいろされて。春季キャンプでは、ホークスでやってきた朝からウェイト・トレーニングをやる習慣とか、若い選手たちに僕が自ら実践して見せてあげたり、食事に連れて行って話したり、少しずつですが意識改革をするように努めましたね。また最後まで諦めない、ゲームセットになるまで顔を絶対に下に向けない精神性を植え付けようって」

 若い選手たちばかりではなく、フロントもビジネス面において多村に教えを乞うた。

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「例えばホークスではどのようなファンサービスをやっていたのかという営業面の話だったり、時にはレクチャーをしながら、選手が動きやすく、結果を出しやすい、チームが一丸となれるような査定システムを提案させてもらうなどあらゆる面で、当時の球団社長に理解してもらうまで少し時間はかかりましたが、お話をさせてもらったんです。それまでのベイスターズとは違って参入から2年目の球団ですから、なにか新しいことにトライしていく、どんどん吸収していこうという気概に溢れた球団になったなと思いましたね」

伝説の大逆転劇

 復帰1年目の2013年シーズン、チームからはレギュラーではない、とはっきりと伝えられていたが、多村はそれでもベイスターズのためと縁の下の力持ちを買って出た。

 そして5月10日の巨人戦(横浜スタジアム)、多村の帰還を祝うような熱い熱い夜が訪れる。3対10と7点差をつけられた7回裏、代打で打席に立った多村が2ラン本塁打を放ち反撃の口火を切ると、その後チームは1点差まで巨人を追い上げる猛攻を見せた。クライマックスは9対10で迎えた9回裏、1アウト一、二塁で多村に打席がまわると、西村健太朗からプロ入り初のサヨナラ3ラン本塁打を放ったのだ。

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