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「営業や査定システムまでアドバイスを」多村仁志が古巣に“出戻り移籍”を選んだワケ「参入2年目のDeNAで常勝ホークスの経験を試したかった」
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石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byJIJI PRESS
posted2025/07/18 11:42

ホークスの主力として定着し、残留も可能だった多村(左端)だが、古巣への帰還を選んだ理由とは……?
現在でも語り継がれる大逆転劇。異常なまでの熱狂に包まれたハマスタ。主役は、まぎれもなく帰ってきたフランチャイズ・プレイヤー多村だった。
「今では逆転勝ちが多くなったDeNAですが、あの試合がひとつのきっかけだったと今でも言ってくれるファンの方がいるんですよ。もう10年以上前の話ですけど、僕としてはあのとき、若い選手たちにこれまで培ってきたものを背中で見せられたんじゃないかなって思っています」
この年、多村は96試合に出場し、3年ぶりに2桁本塁打をマークするなど随所で活躍し、チームの6年ぶり最下位脱出に貢献した。
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その後、多村は2シーズンをベイスターズで過ごし愛着のあったチームを離れると、2016年はかつて打撃開眼を手助けしてくれた落合博満の手引きもあって、落合がゼネラルマネージャーを務めていた中日ドラゴンズの育成選手としてプレー。その年をもって現役引退を表明した。稀代のスラッガーは、誇りを胸に、静かに球界を去っていった。
2度のトレードの意味合いとは
多村は、2度のトレードを経験したが、双方は意味合いが全く違うものだった。1度目は、慣れ親しんだ横浜を離れる喪失感を味わった。2度目は、自分の経験を伝えたいと喜び勇んで横浜に舞い戻った。
「本当、僕としてはいい経験をさせてもらったと思っています。2度のトレードで本当に野球人として成長させてもらったと思っていますから」
そう言うと、多村は柔らかな表情を浮かべた。横浜のフランチャイズ・プレイヤーとしてプロ生活を終えると思っていたが、トレードによって福岡で新たな花が咲き、その実を横浜に分け与えることができた。