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「9回2死満塁でバント」「本盗失敗で試合終了」中日はなぜ“奇策”に頼るのか?「打順に改善の余地ある」アナリストに聞く得点力不足の“意外な盲点”
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曹宇鉉Uhyon Cho
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/07/14 17:28

今季から中日を率いる井上一樹監督。7月14日時点でCS出場圏内の3位まで2.5ゲーム差の5位につけている
一度目は山本が自ら判断したバント、二度目はサインによるホームスチールと経緯は異なるものの、気になるのは一打サヨナラや同点の9回に“奇策”をとらなければならないほど、「打てない」という意識が選手にも首脳陣にも染み付いている点だ。もちろん、極端な“投高打低”の環境やバンテリンドームの特性などは考慮すべきだろう。だがそれ以上に、「うちは貧打だから」という後ろ向きの認識が、負のスパイラルを呼び込んでいるような印象を抱いたファンも多いのではないだろうか。
「3番にはチーム5位の打者を置く」意外なセオリー
中日の得点力不足解消には、どんな手立てが有効なのか。野球のデータ分析を行う株式会社DELTAのアナリストで、弁護士でもある市川博久氏に話を聞いた。
「率直な話をすると、現状の戦力で得点力不足を一気に解消することは難しいのではないかと思います。そのうえであえて改善案を提示するなら、打順の組み換えはひとつの選択肢になります」
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セイバーメトリクスによる研究が進んだ近年のMLBでは、2番に強打者を配置するオーダーが当然のものとなりつつある。市川氏は昨年8月に公開した「3番打者にはチーム5位の打者が置かれるべき。セイバーメトリクス的な打順のセオリーはNPBでも当てはまるか」(※注1)という記事で、「チーム内で打力が1~3位の打者を1・2・4番に置く」というMLBの“常識”が、環境が異なるNPBにおいても有効なのかを多角的に検証している。
同記事では「1・2・4番に強打者を置き、3・5番にこれに続く打者を置く」というセオリーはNPBでも「概ね当てはまる」と結論づけられている。NPBで4番に次いで強打者が配置されやすい3番には「多くのケースでチーム5位の打者を置くべき」という分析結果が導かれた点も興味深い。市川氏によると、3番の優先度が相対的に低くなる要因のひとつとして、初回に「2死走者なし」のシチュエーションで打席が回ってくるケースが多いことがあげられるという。
その前提に立ったうえで、今季の中日の打順について考察してみたい。